組織には必ず、上司がいて部下がいます。
上司は部下に一生懸命働いてほしいと思う反面、部下は見られていないし少しくらいサボっちゃおう。
という心理がが働くのは至極当然です。
では、何故このような状況に陥ってしまうのでしょうか。
今回はモラルハザードといった視点で考えていきたいと思います。
モラルハザード問題とは
例えばここにAさんとBさんがいた時、Aさんは注意深く車を運転していたとします。
一方Bさんは不注意で事故を起こしやすかったとします。

注意深く運転します!!

ちょっと、不注意です。
この2名が車の保険に入った時、もともと注意深かったAさんが、保険に入ったことにより以前より注意深く運転しなくなり、Bさんは更に運転が荒くなってしまいます。

保険入ったし、少し運転が荒くなっても大丈夫

保険入ったし、少し運転が荒くなっても大丈夫
このように、保険に入ったことにより保険が損失をある程度カバーしてくれるため注意深く運転しなくなることは、ある意味合理的と言えます。
これをモラルハザード問題と言います。
モラルハザードが高まる条件は
- 目的の不一致
- 情報の非対称性
にあります。
- 目的の不一致
保険会社は「注意深く運転してほしい」と考えるのに対し、加入者は保険に入ったため「注意深く運転しない」状態。

注意深く運転してほしい

保険入ったから大丈夫!!
- 情報の非対称性
保険会社は加入者の行動を把握できない。

運転状況を把握したい!!

別にみられてないし、運転を荒くしちゃおう。
↓情報の非対称について
モラルハザードの解消
全ての組織はこのモラルハザード問題をもっています。
このモラルハザード問題を解消するためには
- 目的の不一致
- 情報の非対称性
この2つをなんとかする必要があります。
そのためには「モニタリング」と「インセンティブ」が重要になります。
モニタリング
モニタリングとは監視(モニター)する仕組みを組織に取り入れて、情報の非対称性を解消を目指すものです。
- 上司が部下に1週間の業務内容を報告させて、その行動をチェックする
- 検査部門による抜き打ち検査
- バスや電車などの公共交通機関にドライブレコーダーの導入
などもモニタリングにあたります。
また、企業では外部から取締役・監査役を受け入れることもあります。
これも一種のモニタリングと言えます。
外部の目が入ることで企業の透明性が高まり、株主に対しても情報の非対称性が解消できます。
問題点
- モニタリングコスト
従業員、部下の行動を逐一チェックする場合、コストや時間が膨大にかかってしまいます。また、完全にはモニタリングすることもできません。コスト、時間が膨大にかかってしまうため「抜き打ち検査」を行うことになります。
- 機能しない社外取締役モニタリング
社外取締役が経営者の知り合い、身内から選ばれた場合モニタリングとして機能しない場合があります。
インセンティブ
インセンティブとは日本語では誘因であり
- ある条件下で、プレーヤーが持つ特定行動への動機づけ
- やる気を起こさせるもの
です。
一番わかりやすい例では
- 業務連動型の報酬
の導入になります。
部下の給料が歩合制になって業務と連動した場合、部下は一生懸命に働くようになります。
問題点
- 業績連動型のインセンティブ報酬の難しさ①
営業成績のような数値化できる業績指標を持っていない従業員(財務部、法務部、総務部など)には適応しにくいです。また、営業であっても営業成績のみならず、顧客からの情報収集、クレーム対応なども企業に貢献しているため、業績連動型は機能しにくいです。
- 業績連動型のインセンティブ報酬の難しさ②
一般に報酬の大きな変動は好まれません。ほぼ毎月一定の支出があるため報酬に対してはリスク回避的になります。景気や、製品・サービスに対する魅力など、自分の責任ではない理由で成績が不安定化する場合は業績連動型が機能しにくくなります。
臨床工学技士の視点から考える

一生懸命働いてほしい!!

多少手をぬいてもばれないし、サボっちゃおう。
このような状態は臨床工学技士のみならず、どのような組織でも起こりうると思います。
組織だけではなく、チームでも起こると思います。
では、このような状態をどうやって解消すればいいでしょうか。
まず、「目的の不一致」と「情報の非対称性」について考えていきます。
目的の不一致
上司は部の目標だったり、よりよい組織になってほしいため、部下には頑張ってほしいと考えるのは自然です。
一方部下は自分のスキル向上のための勉強だったり、プライベートを大事にしたいなど、仕事をする目的が変わってきます。そのため、他の人が業務をしているから自分は「資格取得の勉強をしよう」、お給料をもらうために仕事をしてるし「サボれるならサボっちゃおう」など様々な人がいると思います。
このような、仕事に対する「目的の不一致」がおこります。
情報の非対称性
上司が部下全員の業務状況を完璧に把握することは不可能です。
そのため、サボっている人、一生懸命業務を行っている人の鑑別が正確に行われません。
問題の解消
問題解消のためには「モニタリング」と「インセンティブ」でした。
しかし、正直業務連動型の報酬を与える「インセンティブ」は臨床工学技士には難しいと思います。
病院の収益に対して臨床工学技士一人ひとりがどのくらい貢献したかの評価を正確に行うのは非常に難しいと思われます。そのため、今回はもう一つの解消法である「モニタリング」について考えていきたいと思います。
モニタリング
一番導入しやすい方法は業務報告だと思います。
上司に対して毎日の業務報告を行うことで、部下の状況をすることができます。
また、業務報告のみならず、トラブルシューティングなどの報告会も踏まえて行うことをルーチン化することで組織の記憶力アップにもつながると思います。
また、外部の目を借りれるのならばそれも手です。
系列の他病院へ臨床工学技士の派遣など、外部の目があれば積極的に業務に行うようになると思われますが、ハードルは高そうです。
上司による「抜き打ち監査」なども手だと思われますが、これは部下からブーイングが起きそうです。
そのため、個人的にはまずは業務報告、そこから報告会へ昇華していき、最終的には報告会へあげられたものをマニュアルにしていくのが良いと思います。

これもなかなか難しいと思いますが・・・・
さいごに
今回はモラルハザード問題から組織を考えてみました。
臨床工学技士は医療機器を扱うため、院内の様々なチームに入ることが多いと思います。
そしてチームも言わば組織になります。そのため、たくさんのチームと関係を持つ臨床工学技士は組織について考える必要ことが多いと思います。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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