人工呼吸器関連の論文置き場。今回は「メカニカルパワー」について。
メカニカルパワーとは
「メカニカルパワー」の前にまずはドライビングプレッシャーについて!!
ARDSにおけるドライビングプレッシャー(ΔP)と生存率の関係についての論文です。
この論文だとドライビングプレッシャーが高ければ高いほど、生存率が下がる結果が出ています。
ドライビングプレッシャーは低いほうがいい!!
↓「ドライビングプレッシャー:ΔP」関連記事
あれ?でもちょっと待てよ。生存率に関わるのはドライビングプレッシャーだけ?
頻呼吸とかも生存率に関わりそう。
人工呼吸器関連肺障害(VILI)の原因はドライビングプレッシャー以外にも
- 一回換気量
- 流量
- 呼吸回数
などが関わってくるよね、という考えが「メカニカルパワー」です。
「メカニカルパワー」に関する論文がこちら!!
この論文ででてくる「メカニカルパワー」の式が
Powerrs=RR(ΔV2×(1/2×ELrs+(1+I:E)/(60×I:E)×Raw)+ΔV×PEEP)
です。この式は肺の仕事量、気道の仕事量、PEEPの仕事量をそれぞれ求めて、呼吸数でかけている形です。
む、難しい・・・
「メカニカルパワー」の考えかたとして
仕事量=力×距離
が大事になります。これを人工呼吸器に当てはめると
仕事量=圧力×換気量
になります。
これに「呼吸数」をかけることで肺にかかる一分間あたりの仕事量になります。
これを「メカニカルパワー:MP」と言います。
式がこんなに難しいと臨床で使いにくいな・・・
といったところで出た論文がこちら。
この論文では
- ドライビングプレッシャーの上昇
- 呼吸数の上昇
は死亡率が上がるという結果が出ています。
さらにドライビングプレッシャーは呼吸数の4倍死亡率が高い結果だったそうです。
こんな式です。
4×ΔP+RR
この式がメカニカルパワーと同等以上に死亡率が推測できるという結果が。
メカニカルパワーの式は難しいしこっちのほうが臨床使用しやすそう。
そこで新しく「イントラサイクルパワー」と、名称をあらため登場した。
メカニカルパワーは流量が式に入っていませんでした。「流量も大事だよね」ということです。
呼吸仕事量は圧力×換気量です。しかし、呼吸仕事率を考えると「単位時間当たり」の仕事を考える必要があります。
そのため、呼吸仕事率は圧力×換気量÷時間です。
換気量÷時間は流量のため、呼吸仕事率は圧力×流量になりそうです。
そこで、流量を変化させたときの呼吸仕事率を出した論文。
PCV、矩形波、漸減波、漸増波、Sinカーブ(自発呼吸)のときの呼吸仕事率に関する論文。
漸増波の場合、最終的な呼吸仕事率が高くなってます。
mild ARDSとsevere ARDSのときの肺、肺と気道にかかる呼吸仕事率に関係する論文。
瞬間的にかかる呼吸仕事率はPCV、矩形波、漸減波、漸増波で違いはあるが最終的な呼吸仕事率は同じという結果。
よって、流量波形の調節により人工呼吸器関連肺障害が予防できる可能性があります。
さいごに
今回はメカニカルパワーについての論文紹介でした。
メカニカルパワーは近年提唱された考え方のため、まだまだ進化しそうです。
呼吸回数や流量もちゃんと設定しましょうね、と言いたいのかなと思いました。
人工呼吸器に関する電子書籍をkindle出版しています。興味のある方は是非!!
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