今回はR/I比に関する論文について。

R/I比ってなに?
そんな疑問を解決できればと思います。
Open Lung戦略に関する論文
まずはOpen Lung戦略に関する論文から。
この論文はPEEPを5cmH2Oと45cmH2Oをかけたとき、肺が開通するかどうかをCTで確認しています。このとき反応性の違いがあり、肺胞が広がる場合もあれば広がらない肺胞もあるという結果がでました。よって、必ずしも高いPEEPが有効ではないということになります。

肺の状態によって広がりやすさが違う!
続いてこの論文。
このトライアルだとラングリクルートメントを実施後にPEEPを設定した群と低いPEEP群だと、ラングリクルートメントを実施後PEEPを設定した群のほうが死亡率が高いという結果が出てしまいました。

えっ!?リクルートメントしないほうがいいの?
しかし、最初の論文のとおりリクルートメントの反応性には違いがあることが分かっています。

ひろがりにくい肺に対してはリクルートメントしないほうが良い!!
しかしここで問題があります。
リクルートメントの反応性です。高い圧をかけて肺胞が開くかどうか、どう見極めればいいのでしょうか。

リクルートメントして反応する肺をどうやって見分ければいいの?
このリクルートメントの反応性をみるのが「R/I比(R/I ratio)」です。
R/I比(R/I ratio)とは

R/I比ってなに?
R/I比(R/I ratio)とは英語では「Recruitment-to-inflation ratio」です。
R/I比で重要なポイントは
低いPEEPで換気したときの肺容量と高いPEEPをかけたときの呼気終末の肺容量
です。
低いPEEPで換気したときの肺容量と比べ高いPEEPをかけたときの呼気終末の肺容量が大きければ、それは高いPEEPによって肺胞が開通した量と言えます。

図ではこんな感じ。

肺胞が開通していなければ「肺容量差」は生まれません。この「肺容量差」がR/I比(R/I ratio)では重要になります。

なんとなくわかったような、わからないような・・・・
では、実際にR/I比(R/I ratio)を算出してみましょう。
例えば一回換気量400mL、PEEP5cmH2Oで換気していたとします。この時のプラトー圧が17cmH2Oだったとします。
この場合のコンプライアンスは
C=ΔV/ΔP
のため、
C=400mL/(17-5)cmH2O≒33.3mL/cmH2O
となります。これがPEEP5cmH2Oのときのコンプライアンスになります。

次はPEEPを高く設定!!
次にPEEPを15cmH2Oにあげたとします。一回換気量は400mLの設定のままです。この状態からPEEPを5cmH2Oまで落とします。
PEEP15→5cmH2Oと低くしているため、もし高い圧力で肺胞が広がっていたならば、呼気一回換気量を増加するハズです。

呼気一回換気量は増えるはず!!
この時の呼気一回換気量が1000mLだったとします。
- 1000mL-400mL=600mL
本来であれば、PEEP設定15cmH2Oだった場合の呼気一回換気量は400mLのはずですが、PEEPを下げたことにより600mL呼気一回換気量が増加しました。
次にPEEP5cmH2Oのときの換気量です。
PEEP設定を15cmH2Oから5cmH2Oに変更しているためΔPは10cmH2Oになります。

このΔPとさっき算出したPEEP5cmH2Oのときのコンプライアンスを用います!!
PEEP5cmH2Oのときのコンプライアンスは
C=400mL/(17-5)cmH2O≒33.3mL/cmH2O
でした。
このコンプライアンスの値とPEEP設定15→5cmH2O(ΔP:10cmH2O)を代入してあげます。
すると
33.3mL/cmH2O=ΔV/10cmH2O
となります。
この式よりΔVは
ΔV=33.3×10=330mL
となります。

さっき算出した600mLから330mLを引いてあげれば、リクルートメントした肺容量が求まります!!
600mL-330mL=270mL
この270mLがリクルートメントした量で、ΔVrecと言います。
※recはRecruitment(リクルートメント)の頭からとっています。
PEEP15cmH2Oから5cmH2Oにした圧力はΔPrecと言います。

ΔVrecとΔPrecからコンプライアンスを求めます。
Crec=ΔVrec/ΔPrec
Crec=270/10=27mL/cmH2O

このCrecとPEEP5cmH2Oの時のコンプライアンスを比べます
PEEP5cmH2Oの時のコンプライアンスは33.3mL/minでした。よって
R/I比=27/33.3≒0.81
となります。これで求まった値がR/I比(R/I ratio)です。

0.5~0.7以上あればリクルータビリティがあると言われています!!
まとめると、
- 高いPEEPから低いPEEPに設定して呼気一回換気量を測定
- 高いPEEPの時の呼気一回換気量を引く
- 低いPEEPのときのコンプライアンスを計算し、コンプライアンスから一回換気量を計算
- 肺容量差→ΔVrec
- 高いPEEP-低いPEEP(図では換気圧)→ΔPrec
- 算出したコンプライアンス→Crec
- Crecを低いPEEPの時のコンプライアンスで割った値が「R/I比(R/I ratio)」
です。
R/I比に関する論文
R/I比を算出するために一呼吸でPEEPを変化させてその時の肺容量に違いからリクルータビリティを評価します。
それについて記載された論文がこちら。
PEEPを15cmH2Oから5cmH2Oに変化させます。PEEPを15cmH2Oのときに肺胞が開いていればその分、換気量が増加します。その換気量の増加を人工呼吸器の呼気一回換気量でモニタリングします。
つまりVrecに関する論文です。
このやり方はベッドサイドで簡単にできるため、この手法によりRM(リクルートメントマニューバ)が使用される頻度が増加しました。
↓Vrecを応用したR/I比についての論文がこちら
R/I比は
リクルートメントされた肺領域のコンプライアンス/リクルートメントする前の肺領域コンプライアンス
です。
PVカーブの図などを用いて説明されています。
このR/I比を利用した論文がこちら。
COVID-19に対してR/I比(Recruitment-to-inflation ratio:肺胞を拡げることができるかどうかの指標)を用いてHigh RecruiterとLow Recruterに分類しています。
Recruitablityがある場合は高PEEP+腹臥位では酸素化が良好に、Recruitablityがない場合は低PEEP+腹臥位が良い結果に。
↓EITの論文は下記記事。
計算するのがめんどくさい!?
R/I比、計算するのがめんどくさいと思います。
そんな時はコレ!!

このサイトに数値を入力すると自動で計算してくれます!!
入力項目に「AOP」というものがあります。このAOPとは「末梢気道が広がり始めるポイント」です。
↓「AOP」関連の記事。
先ほどの例のPEEP設定15→5cmH2Oと変更した場合ですがAOPが8cmH2Oだった場合、R/I比の計算も大幅に変わってしまうため、R/I比を計算する場合、AOPも同時に測定した方が良いです。
さいごに
オープンラング関連、とくにR/I比についての論文紹介しました。

リクルータビリティの評価はCT!!だけど簡単に測定できない・・・・
そんな悩みが解消されるため今後、R/I比の使用頻度は増えそうです!!
「リクルータビリティ」関連の論文では「P-Vcurve」も知っておきたいところ。
↓「P-Vcurve」に関する記事。
- 【人工呼吸器】EIT【論文】
- 【人工呼吸器】R/I比【論文紹介】
- 【人工呼吸器】NAVA【論文置き場】
- 【人工呼吸器】メカニカルパワー関係【論文】
- 【人工呼吸器】ドライビングプレッシャー:ΔP【論文】
- SpO2の管理はどのくらい?【論文・ガイドライン】
- 【人工呼吸器】P0.1,ΔPocc【論文】
- 【人工呼吸器】経肺圧【論文】
- 【人工呼吸器】PMI(Pmus Index)【論文】
- 【人工呼吸器】AOP【論文】
- 【人工呼吸器】SBT【論文】
- 【酸素療法】HFNC【論文紹介】
- 【人工呼吸器】Vcap(Volmetric Capnography)【論文】
- 【人工呼吸器】VIDD【論文紹介】
- 【人工呼吸器】人工呼吸器の不同調(非同調)
- 【人工呼吸器】リバーストリガー【不同調】
- 【人工呼吸器】PAV【換気モード】

人工呼吸器に関する電子書籍をkindle出版しています。興味のある方は是非!!
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