VIDDとは?
VIDDとはいったいなんでしょうか?
VIDDとは
人工呼吸誘発性横隔膜機能不全(ventilator-induced diaphragmaticdysfunction)
です。
人工呼吸器によって誘発される横隔膜機能不全の総称をVIDDと言います。
人工呼吸中の横隔膜障害の原因は
- 人工呼吸の補助が過多(委縮)
- 不十分な呼吸補助(肥厚)
- 呼気終末容量も増加により横隔膜が収縮し続ける事による筋委縮
- 非同調
が考えられれます。
では、VIDDの論文を見ていきましょう!!
VIDD関連の論文
まずはこの論文!!
これは2008年の論文です。
この論文では18~69時間、人工呼吸管理を行った14症例を対象として病理の検体検査を行った結果、横隔膜の委縮を認めました。また、横隔膜の断面積も委縮した、という結果が。
よって、人工呼吸器管理により横隔膜障害を引き起こすことが分かりました。
論文をもう1個!!
この論文の結果では
人工呼吸器管理患者の50%が3~4日で横隔膜委縮を引き起こし、
- 人工呼吸器期間の延長
- ICU滞在時間の延長
- 挿管中の合併症
を引き起こす、という結果が出ました。
どうやら「人工呼吸」は横隔膜に良くなさそう・・・
続いてはこの論文。
人工呼吸器開始から2週間Tdiを測定しました。
※Tdiとは横隔膜の厚さであり、健常人であれば2mm程度、収縮した場合は4~5mm程度です。
この論文では横隔膜の厚さが
- 10%以上増加
- 10%未満の変化
- 10%以上減少
の3群に分かれたという結果。さらに、10%以上変化した群は3週間以上の人工呼吸器管理になるリスクが高い結果がでました。
では、横隔膜の厚さの変化の原因は何なのか
年齢?性別?BMI?
有意差が出たのは「ΔP:ドライビングプレッシャー」でした。
※一回換気量は6mL/kg程度(低一回換気量設定)で有意差はありませんでした。
横隔膜が薄くなる群では「ΔP:ドライビングプレッシャー」が高く、横隔膜が厚くなる群では「ΔP:ドライビングプレッシャー」が低い、という結果。
↓ΔP:ドライビングプレッシャーについての記事。
つまり、
- 過剰な換気補助は横隔膜が萎縮
- 過小な換気補助は横隔膜が肥厚
ということになります。
次は動物実験の論文
ラットにPEEPをかけることにより横隔膜をお腹側に偏移させることで「横隔膜の構造変化」が起きるのでは?という論文。
結果は「横隔膜の縦方向の筋繊維が減少する」という結果でした。
横隔膜は収縮し続けていると筋委縮が起きる!!
さいごに人工呼吸器の非同調。
たとえば「ミストリガー」。
オートPEEPがあり、息を吐いている中で吸気努力するとどうなるでしょうか。
息を吐くことで横隔膜が伸びていきます。その途中で息を吸うことで横隔膜が急に収縮します。
「横隔膜が伸びている中で急に収縮」することで横隔膜にダメージを与えてしまいます。
非同調は横隔膜にダメージ!!
よって
- 人工呼吸の補助が過多(委縮)
- 不十分な呼吸補助(肥厚)
- 呼気終末容量も増加により横隔膜が収縮し続ける事による筋委縮
- 非同調
に、気を付けなければなりません。
さいごに
人工呼吸管理をするだけで横隔膜にダメージを与えることがわかりました。
「ΔP:ドライビングプレッシャー」や非同調には注意していきましょう。
人工呼吸器に関する電子書籍をkindle出版しています。興味のある方は是非!!
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