信頼性工学と臨床工学技士ってなにか関係あるの?
もちろん関係あります。ではここで一例。
臨床工学技士の業務指針の1つである医療機器管理業務指針を見ていきましょう。
これは「医療機器管理業務指針」から抜粋したものです。ここには「バスタブ曲線」「偶発故障期」「摩耗故障期」という単語がでてきます。
バスタブ曲線?偶発故障期?摩耗故障期?
これらは「信頼性工学」の用語です。つまり、機器管理をする上で「信頼性工学」を学んでおく必要がある、ということになります
また医療機器管理業務指針には以下のような記載もあります。
↓PDCAサイクルに関する記事
機器管理する上ではいろいろなことを知っておく必要がある!!
今回は「信頼性工学」について見ていきたいと思います。
信頼性とは
そもそも「信頼性」とはなんでしょうか。
信頼性ってなに?
信頼性とは
アイテムが与えられた条件下で、与えられた期間、要求機能を遂行できる能力
と、定義されています。
どういうこと?
新幹線で考えていきます。新幹線の目的は「目的地Aから目的地Bまで時間通りにたどり着く」こととします。すると、新幹線に求められる信頼性は「時間通りに目的地へたどり着く」こと、になります。
似た言葉に「安全性」があります。
「信頼性」と「安全性」って何が違うの?
安全性の定義を見ていきましょう。
安全性とは
人への危害または資材の損傷の危険性が、許容可能な水準に抑えられている状態
とされています。
どういうこと?
では、「安全性」について新幹線を例に考えていきましょう。新幹線運行中にトラブルが発生したとします。トラブルがあれば新幹線は止まって、トラブルの確認をします。もし、止まらなければ安全性が低い、ということになります。新幹線が止まるということは「安全性」が高い一方、目的地AからBに時間通りにたどり着けなくなってしまいます。よって「信頼性」は低いということになります。
よって、「信頼性」と「安全性」は似ていいるようで本質は違うということになります。
デイペンダビリティ
デイペンダビリティってなに?
デイペンダビリティとは「信頼性」と「保全性」を含んだ幅広い意味で世界的に使用されている言葉です。
保全性?
ではデイペンダビリティについて「保全性」含め見ていきましょう。デイペンダビリティとは
- 信頼性性能:故障しない性能
- 保全性性能:故障してもすぐに直る性能
- 保全支援能力:修理品や保全の工具などが入手できる能力
です。
デイペンダビリティは故障もしないし、故障をすぐ直す性能のこと!!
次は「信頼性」と「保全性」を把握する方法を見ていきましょう
MTBF
対象が修理系の場合
対象が修理系の場合はMTBF(Mean Time Between Failures:平均故障間動作時間)を使用します。
修理系?
修理系とは「保全によって継続的に使用する」ことが可能なモノです。
MTBF?
MTBFとは
修理系アイテムで連続する2つの故障間の全運用時間の平均値、または故障間動作時間の期待値
です。
MTBFの式は
MTBF=期間中のシステム総稼働時間/期間中のシステム総故障数
です。MTBFにはMTTFF(Mean Time To First Failure:動作可能な時点から最初の故障までの時間)を含めます。
MTTF
対象が非修理系の場合
対象が非修理系の場合はMTTF(Mean Time To Failures)を使用します。
非修理系?
非修理系とは「部品や材料など故障が起こっても修理しない」モノです。
MTTF?
MTTFとは
アイテムが動作可能状態となった時点から初めての故障までの全運用時間の平均値
です。平均故障寿命ともいいます。
MTTR
保全を伴う場合
MTTR(Mean Time To Repair:平均修復時間)とは
アイテムの故障によって、ダウン状態にある時間の平均値、または修復時間の期待値
です。保全能力を示す指標となります。
アベイラビリティ
アベイラビリティ?
アベイラビリティとは
要求された外部資源が容易されたと仮定したとき、アイテムが与えられた条件で、与えられた時点、または期間中、要求機能を実行できる状態にある能力
です。
アベイラビリティは「信頼性性能」「保全性性能」「保全支援能力」を組み合わせて信頼度を表しています。
信頼度?
信頼度とは
アイテムが与えられた条件のもと、与えられた時間間隔に対して、要求機能を実行できる確率
です。
- 固有アベイラビリティ=MTBF/MTBF+MTTR
- 運用アベイラビリティ=MUT/MUT+MDT
で表すことができます。
※MDT→Mean Down Time MUT→Mean Up Time
バスタブ曲線
非修理系の製品のライフサイクルは初期故障期、偶発故障期、摩耗故障期に分類できます。
- 故障率減少形(DFR:Decreasing Failure Rate)→初期故障期
- 故障率一定形(CFR:Constant Failure Rate)→偶発故障期
- 故障率増加形(Increasing Failure Rate)→摩耗故障期
これらを図にすると以下のようになります。
この図を寿命特性曲線とよび、グラフが浴槽に似ていることからバスタブ曲線(バスタブカーブ)と言います。
初期故障期、偶発故障期、摩耗故障期について見ていきましょう!!
初期故障期
初期故障期は
- 設計上の欠陥
- 材料の不良
- 使用環境の不適合
などが原因で発生する使用後すぐに発生すます。
ならし運転(エージング)、デバッキング(血管を検出・除去すること)が重要になります。
偶発故障期
初期故障期の後に発生する故障で、偶発的に発生します。この期間の故障は、どの時間でもほぼ一定の割合で発生します。
摩耗故障期
疲労と摩耗などによるの劣化現象によって発生する故障です。時間経過とともに故障率が大きくなる特徴があります。設備の予防保全や事後保全によって故障率の上昇を抑えることが可能です。
摩耗故障により設備の故障率が増加し、経済的に引き合いが合わなくなる点を耐用寿命と言います。
- 過酷な使用環境や保全が不十分なほど摩耗故障期の故障率が増加
- ある時点で集中的に発生する
という特徴を有しています。
さいごに
今回は最低限知っておきたい「信頼性工学」について記載していきました。機器管理をする上で信頼性工学は重要になります。
信頼性工学を利用して機器管理をしていきましょう!!
↓機器管理おすすめ本についての記事
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