
PAVってなに?
PAVとは人工呼吸器の換気モードの一つです。

どんなモード?
では、今回はPAVについて見ていきましょう。
PAVモード

PAVモードってなに?
PAVモードとは
- Proportional assist ventilation
- 患者の吸気努力に応じたサポートを行う自発呼吸のモード
です。

つまり、どういうこと・・・?
では、PAVの詳細を見ていきましょう!!
まずは呼吸メカニクスについて

PAVの詳細の前に、まずは呼吸メカニクスについて見ていきます!!
ヒトの呼吸について考えるとき、大きく「気道」と「肺胞」に分けることができます。


こんな感じ!!
これら「気道」と「肺胞」を広げる圧力について考えていきます。
まずは気道を広げる圧力について。これは「流量」と「気道抵抗」で表すことができます。
気道を通過する圧力(気道を広げる圧力)=流量×気道抵抗
です。

オームの法則(V=IR)で考えてみるとわかりやすいかもです。
続いて肺胞を広げる圧力について。
肺胞を広げる圧力は「肺胞に入った量」と「呼吸器の弾性抵抗(エラスタンス)」で表すことができます。

エラスタンス?
エラスタンスとは「呼吸器系の硬さ」であり、「呼吸器系のやわらかさ」である「コンプライアンス」の逆数になります。
↓↓↓コンプライアンス関連の記事です!!
肺胞を広げる圧力は
肺胞を広げる圧力=肺胞に入った量×エラスタンス
となります。

図にするとこんな感じ!!

つまり、呼吸するためには
- 気道を通過する圧力(気道を広げる圧力)=流量×気道抵抗
- 肺胞を広げる圧力=肺胞に入った量×エラスタンス
の2つの圧力が必要になるということです。
呼吸するのに必要な圧力
=気道を通過する圧力(気道を広げる圧力)+肺胞を広げる圧力
=流量×気道抵抗+肺胞に入った量×エラスタンス
と、なります。

これらの圧力を「人工呼吸器」と「患者さん」で作りだす必要がある!!
呼吸する圧力の測定
続いて「呼吸する圧力」をどのように測定するか、についてです。呼吸する圧力を求めるために必要な値は
- 流量
- 気道抵抗
- 換気量
- エラスタンス
です。
エラスタンスはコンプライアンスの逆数です。そのため、コンプライアンスを測定できればエラスタンスも測定可能となります。

いつコンプライアンスを測定しているの?
コンプライアンスを測定するタイミングは
- スタート時
- 数呼吸に1回
です。0.3秒と短いポーズ時間を設けることでコンプライアンス測定が可能となります。
続いて気道抵抗について。
気道抵抗は吸気ポーズ後、呼気に移行し最大流量となるタイミング、5m秒後、10m秒あとの3点の流量を測定し、その点の肺胞内圧を計算して計算して求めます。

呼気流量から気道抵抗を求めているため、計算して求められるのは「呼気の気道抵抗」になります。
流量と換気量に関しても短い時間(1秒に200回)で測定しています。
このように
- 流量
- 気道抵抗
- 換気量
- エラスタンス
を測定しています。
PAVモードとは?
ここでようやく本題。

PAVってどんなモードなの?
- Proportional assist ventilation
- 患者の吸気努力に応じたサポートを行う自発呼吸のモード
「患者の吸気努力に応じたサポートを行う自発呼吸のモード」であるため、自発呼吸が無ければ使用できないモードになります。

患者の吸気努力に応じたサポートを行う自発呼吸のモード?
どういうことでしょうか。もう少し詳しく見ていきます。
呼吸をするために必要な圧力は
呼吸するのに必要な圧力
=気道を通過する圧力(気道を広げる圧力)+肺胞を広げる圧力
=流量×気道抵抗+肺胞に入った量×エラスタンス
でした。
PAVはこの圧力を「人工呼吸器が何%、患者さんが何%負担するか」を決めてあげて換気するモードです。
例えば人工呼吸器50%、患者さん50%の割合で負担するとします。そうすると吸気時に患者さん自身が吸う圧力と人工呼吸器が送るガスの圧力が同じになります。呼吸するために必要な圧力、つまり、気道を通過する圧力(気道を広げる圧力)と肺胞を広げる圧力の合計値の半分を患者さん自身、もう半分が人工呼吸器でサポートしてあげるモードとなります。
流量と換気量に関しては非常に短い間隔(1秒に200回)で測定しています。よって1/200秒前に測定した呼吸するのに必要な圧力をもとに次の呼吸の圧力を決めます。

圧力のタイムラグが1/200秒!!
実際の設定の画面では「呼吸仕事量」として表示されます。
仕事量は力×距離です。
人工呼吸器でいう仕事量は「胸腔内圧の変化」×「容量変化(換気量)」となります。
この仕事量が
- エラスタンスに対する仕事量
- 気道抵抗に対する仕事量
などが可視化されています。
PAVの注意点・吸気努力
吸気努力が低い場合
同じ自発呼吸のモードであるPSVでは患者さんの自発呼吸を検知した際、設定した圧力で換気をします。患者さんの吸気努力の大小を問わず、同じ圧力で換気します。
一方PAVでは吸気努力が弱ければその分供給されるガスの量も低くなってしまいます。
回路内結露によるオートトリガーなどでは、誤検知してもほとんどガスを送らないというメリットがある一方、患者さんの吸気努力が弱い場合にはサポート不足になってしまうため、注意が必要です。
吸気努力が高い場合
逆に吸気努力が強い場合でも同様に注意が必要です。
- 吸気努力が非常に強い場合
- コンプライアンスが非常に低い
などの理由によって吸気努力が強い場合、過剰なサポートになってしまう可能性があります。

患者さんの呼吸努力によって換気量が変わる!!
吸気努力に比例したサポート圧になるモードをプロポーショナルモードと言います。PAVの他にはNAVAもプロポーショナルモードと言えます。
↓↓↓NAVAに関する記事

NAVAは横隔膜の活動電位を利用しています!!
さいごに
今回はPAVについて記載していきました。特殊なモードですが、
- 患者さんの吸気努力によってサポート圧が変化
- 気道抵抗やエラスタンス(肺メカニクス)を考慮
したモードとなっており、肺に優しいモードと言えます。

先ほど紹介したNAVAは横隔膜の活動電位が換気量に関わってくるため、肺メカニクスは考慮していません。

興味のある方はこちらの記事も是非!!
- 【人工呼吸器】EIT【論文】
- 【人工呼吸器】R/I比【論文紹介】
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- 【人工呼吸器】人工呼吸器の不同調(非同調)
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