医療関連法規や行動経済学など、医療関係のおすすめ本を臨床工学技士目線で紹介。
教育
学生・新人看護師の目の色が変わる アイスブレイク30
後輩指導などする方におすすめです!!
- なぜ、アイスブレイクがいいのか
- 主体性を引き出すアイスブレイク
- チームワークを引き出すアイスブレイク
- 思考力を引き出すアイスブレイク
計120ページです。
ちょっとページ数が少ないなーと思ってしまいますが、実践できるアイスブレイクが30個ものっています。
どんな本?
そもそもアイスブレイクとはいったい何でしょうか。
特に医療従事者などは聞きなじみがないかもしれません。教育現場やビジネスシーンなどでよく使われている「アクティブラーニング」の技法の1つです。
アイスブレイクとは集まって人たちの緊張をほぐすためのコミュニケーション技術です。
本書はアイスブレイクを通じて主体性やチームワーク、思考力など、医療従事者に必要なノンテクニカルスキルを学ぶことを目的としてます。
アイスブレイクで有名なものをあげると
- ヒーローインタビュー
- 自己・他己紹介
などがあります。
例えば、ヒーローインタビューは「質問する人」、「質問を受ける人」の2人ペアになります。
「質問を受ける人」は身近なもの(ペットボトル、眼鏡など)になりきり、「質問する人」は「質問を受ける人」が話しやすいようにインタビューをしていきます。
実施した後、「どんな質問が答えやすかったか」、「どんなことを聞けたか」を考えていきます。
具体的な質問が良かったのか、相手の立場になった質問なのか、その結果どのような内容が聞けたのかを分析していきます。
一見すると、医療とはあまり関係ないように見えます。
しかしこれは「問診」のトレーニングになります。
このように、「医療の知識」以外のスキルを高めるために、参加型で学習できるのが「アイスブレイク」のいい点になります。
本書のいいところ
本書は各種有名な「アイスブレイク」の手法が記載されています。
正直、「アイスブレイク」の内容に関してはいろいろな本が出版されているため、ただ単に「アイスブレイク」を実施したいだけなら別の本で学んだ方がいいと思います。
本書のいいところは「アイスブレイク」をどうやるかではなく、「アイスブレイク」を実施することで医療現場にもたらす効果
が併せて記載されている点です。
各「アイスブレイク」ごとに、「問診力」、「コミュニケーション能力」、「価値観」など、目的ごとのトレーニングができる点がいい点です。
「チーム医療」を実施するためには「多職種連携」が求められます。そのためにはコミュニケーション能力や価値観は必須のスキルとなります。
よって、医療とアイスブレイクをうまく紐づけされたいい本だと思います。
特に新人向けに「アイスブレイク」を実施するのがいいと思いました。
自分が新人の時を思い出してみても、「知識」や「手技」はさることながら「問診力」、「コミュニケーション能力」など、「知識」・「手技」以外のところで悩んだことが多かった気がします。
今後の新人教育で「アイスブレイク」を試していきたいです。
医療法規
医師が知っておきたい法律の知識 医療現場からみた医事法解説
医療関連法規興味がある人におすすめです!!
- 知っておきたい医事法の基本
- 医師と患者の関係について
- 診療現場で知っておきたい医師の法的義務
- インフォームドコンセントと説明義務
- 診療(医療)情報と個人情報保護法
- 医療過誤に関連する法律(民事)
- 医療過誤に関連する法律(刑事)
- 医療行為と行政処分
- 身体拘束の法的側面
- 実臨床における法的問題(医療倫理と法)
- 医療現場におけるQ&A
索引込み188ページになります。
本書を読んだ理由は「火焔の凶器 天久鷹央の事件カルテ」を読んだことがきっかけでした。
「火焔の凶器 天久鷹央の事件カルテ」にこんなセリフがありました。
『医学』に法律は必要ないが、『医療』を行うためには法律の知識が必要なんだよ
「火焔の凶器 天久鷹央の事件カルテ」98ページより引用
このセリフを読んだ時、「確かに」と納得してしまいました。
ちなみに「医学」と「医療」は違います。
医学:解剖、生理学、生化学など人体の構造と機能に関する学問と病理学、微生物学、内分泌・免疫学などの病態に関する学問
医療:医学を実践すること
医療従事者として最低限必要な医療法規に関して学びたいと思い、本書を購入しました。
どんな本?
個人的に医療過誤に関わる部分が非常に興味がありました。
医療過誤と似た言葉で医療事故があります。
では、医療事故と医療過誤は何が違うのでしょうか。
医療事故:本来の医療行為が開始されてから終了するまでのプロセスにおいて予想外のことが起こった場合
医療過誤:診断・治療の不適正、施設の不備等によって医療上の事故を起こすこと
となります。
しかし、「医療過誤」に関して非常に難しいと感じました。
そこで本書の
- 医療過誤に関連する法律(民事)
- 医療過誤に関連する法律(刑事)
- 実臨床における法的問題(医療倫理と法)
の項目が勉強になりました。
また、「終末期ディスカッション」は「医の倫理」などについて詳しく書かれているためおすすめです。
「医療法規」と「医の倫理」は密接な関係があります。
医療関係者といえども、最後は法律に従わなければならず、法律は強制力を持って「医の倫理」、「生命倫理」を補完するものになります。
本書はそんな法律を主眼に解説されています。
※私は法律関係に関してはほとんど知識がないため、他の医療書に比べて読むのに骨が折れました。
本書のいいところ
やはり、「法律関係」について学べることだと思います。
就職すると、「医療安全」などの「医療事故」を起こさないための勉強などはしますが、「法律」に関してはほとんど勉強しないと思います。
学生時代なら「医療法規」について勉強しますが、それきりとなってしまうことが多いと思います。
しかし「法律」は非常に大事になります。
法律は自分を守るものでもあり、法律を破れば知らないほうが悪い
ため、学ぶ価値ありだと思います。
医療情報
医療者のための情報発信 SNS時代に伝えたいことを伝えたい人に届けるヒント
SNSで医療情報を提供したい人におすすめです!!
- 情報発信をするようになったきっかけ
- どのように情報発信をしているか
- 情報発信をするうえで気を付けていること
- 情報収集の方法
を計29人のSNS先人者たちの実体験をもとに254ページにわたって解説されています。
どんな本?
- 何故医療の情報を発信するようになったのか
- SNSを活用して何を伝えたいか
- どのような葛藤があったのか
などなど、苦悩と葛藤、そして今が記載されています。
特に情報発信のきっかけとして多かったのが、
「医療に関するエビデンスのない情報が乱立されている」
でした。インターネットの普及により、より簡単に情報が得やすくなった半面、信憑性のない情報も多数あることの危機感でした。
情報の受け取り手としては何が正しい情報で何が間違っている情報なのか取捨選択しなければなりませんが、医療の知識がない人にはそれがなかなか難しいです。※医療の知識があってもなかなか難しいですが、、、
- そのためにどうするか
- どのような行動をするか
- SNSをどのように使うか
を、先生方の経験談をお話してくれています。
本書のいいところ
SNSに限らずWeb媒体(Youtubeやブログなど)の情報発信について詳しく言及されています。
正直、Webを使わないで情報収集をしている人は今の時代、いないのではないかと思います。
そのため、本書はWebを活用している人すべてに関係しているのではないかと思います。
医療者のための情報発信のあり方を非常にわかりやすくかみ砕いて教えてくれます。
流石はSNSを駆使して情報発信しているスペシャリストの先生方なだけあって、めちゃくちゃ読みやすいです。
ついつい一気見してしまいました。
これからはSNS時代(今もですが)になります。
医療従事者がSNSやWebとどのように付き合っていくかを考えるいい指標になるのではないかと感じました。
行動経済学
「医療」+「行動経済学」に興味ある人におすすめです!!
「医療行動経済学とは何か」、「患者と家族に意思決定」、「医療者の意思決定」について詳しく書かれています。
索引なしで3部13章構成、265ページになります。
どんな本?
行動経済学とは私たちの「心」を基礎にして物事を考えます。
つまり、心理学の理論を応用して人の意思決定を分析します。
例えば、
- 不安:試験に落ちないように勉強しよう
- 悲しみ:心の傷を癒すために旅に出る
- 喜び:仕事がうまくいったから買い物をしよう
などと、心の持ちようで行動が変化します。
時には心の動きにより人は理屈に合わない行動をすることがあります。
安い宝石店と高い宝石店が合った時、消費者はあえて高い宝石店で買ってしまうという理屈に合わない動きをしてしまいます。
このような心の在り方で変化する行動を医療の現場にあてはめようとしたのが本書になります。
病院を受診した時に
- 医者「なぜ患者さんは治療方針を決められないのか」
- 患者「なぜお医者さんは不安な気持ちをわかってくれないのか」
本書はこうした溝を埋める手助けをしてくれます。
- 「ここまでやってきたのだから続けたい」:サンクコストバイアス
サンクコストとは「埋没した費用」という意味です。
過去に支払った費用や努力のうち、戻ってこないものをさします。
払い戻し、転売不可なチケットを購入した場合、その費用はサンクコストになります。
後から魅力的な予定が入っても、チケットを購入したという理由からコンサートや旅行に行ってしまいます。
医療の場合、例えば10年間続けてきた治療を中止すると、今までに治療が無駄に感じてしまう状態などをさします。
こうした場合、今後の治療におけるプラス面とマイナス面を説明し、治療を続けることにより発生するコストを強調して、過去のコストよりも将来の費用と便益で考える必要があります。
- 「まだ大丈夫だからこのままでいい」:現状維持バイアス
現状維持バイアスとは現在の状態を変えることにより損失してしまうと考えてしまうことが原因となります。
この場合、現状が判断基準になっているため、標準的な治療法を参照点に変える意図として「皆さんに一応お伝えしている」という表現で将来の選択にコミットする形で伝えることが大切になります。
- 「今は決めたくない」:現在バイアス
現在バイアスとは
「現在の楽しみを優先し、始めることを先延ばしにしてしまう」という対応です。
例えば、夏休みの宿題をいつしたかと質問すると多くの人が夏休みの終わりのほうにしたと答えます。しかし、いつやるつもりだったかと質問すると多くの人が夏休みの前半に行うつもりだったと答えます。
これも現在を優先して先延ばししたと考えられます。
延命処置するかどうかなど、つらい意思決定をする際、先延ばしにするという現在バイアスが発生する可能性が高いです。
「多くの場合、このような意思決定をしている」という表現を用いることで、同調性や自分自身の積極的意思決定ではないというデフォルトに近い手法にすることで患者さん自身の負担を減らすことが大切になります。
- 「がんが消えた」:利用可能性ヒューリスティック
利用可能性ヒューリスティックとは正確な情報を手に入れないかそうした情報を利用しないで、身近な情報や即座に思い浮かぶような知識をもとに意思決定を行うことをさします。
例えば、医療者が提示する医学情報ではなく、知り合いの人が使った薬や治療法を信じてしまうことです。
こうした場合、患者さんの意思決定を尊重しつつも、正しい情報ではないことに加えて、看護師さんなどが具体的に患者さんを知っていることを示すことで、利用可能性ヒューリスティックを逆に利用して説明することが大事になります。
本書のいいところ
事例が紹介され、それについて行動経済学に基づいて説明されます。
行動経済学についても詳細に説明してくれているため、行動経済学について知らない方も安心して手に取れると思います。また、医療者視線、患者さん視線双方の説明があるのもいい点です。
正しい意思決定をするために「どのような説明をするか」のみならず「どのようなチラシをつくるか」などの説明もあるのもポイントが高いです。
正直私は今まで行動経済学についてそこまで知らなかったため、本書を読んで目から鱗でした。
- なるほど、こういう考え方だったんだ
- こういう説明をすればいいんだ
- 資料はこうつくればよかったんだ
と、非常に学びが多い一冊でした。
↓ちなみに、「行動経済学」をざっくり学びたい方におすすめ。
さいごに
医療関連本について紹介させてもらいました。
なかなか学校などでは勉強しなそうな本をメインに今後も紹介していこうと思います。
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