医療情報システムとは「医療分野における情報システム」です。例えば、
- 病院情報システム
- 電子カルテシステム
- オーダリングシステム
- 部門システム
などがあげられます。
これら「システム」はすでに多くの医療機関に導入されており、切っても切れない関係になっています。さらに「2030年までに全ての医療機関へ標準型電子カルテシステムの導入」が目標となっています。
すべての医療機関にシステムが導入される!!
よって、今後全ての医療機関に「システム」される見通しですが
医療機器とシステム連携する上で知っておきたいことってなに?
ということで、「医療機器とシステム連携」する上で知っておきたい必要最低限のこと(おもに設定について)が今回のテーマになります。
PCなどに詳しい方は
もう知ってるよ!!
という内容かもしれませんがご了承ください。
↓なお、医療機関におけるサイバーセキュリティに関する記事は以下へ。
医療機器とシステム連携
「医療機器とシステム連携」する上で知っておきたいこととして
- 「医療機器」の可搬性
- システム連携するための設定
について書いていこうと思います。
まずは「医療機器」の可搬性について!!
「医療機器」の可搬性
まず、「医療機器」の可搬性について。
ようは「どこで医療機器を使うか」です。医療機器の可搬性には大きく3つに分けられます。
- 病院内利用設置型
- 病院内利用可搬型
- 病院外利用型
です。
それぞれ見ていきましょう!!
病院内利用設置型
病院内利用設置型とは?
病院内の設定された場所から「動かさない」で使用される医療機器
です。ナースステーションに設置されたセントラルモニタなどは、基本的に動かさないため「病院内利用設置型」と言えます。さらにCTやMRI装置なども「病院内利用設置型」と言えます。
これらは病院内の特定の人物のみが使用し、プライベートなネットワークになっているため、サイバー攻撃を受ける可能性は低くなっています。しかし、メンテナンス時など偶発的な事故は発生する可能性があります。
病院内利用可搬型
病院内利用可搬型とは?
病院内の検査室やICU、MEセンターなど、場所を移動して使用される医療機器
です。人工呼吸器や輸液ポンプなど、中央管理・中央貸し出しされている医療機器は「病院内利用可搬型」になります。病院内のいたるところで使用されるため、ネットワークの繋ぎ変えも頻繁に起きます。そのため、ネットワークのつなぎ間違いに気を付けなければならず、
- パブリックネットワークへの接続
- 放置されたタブレット端末からの不正アクセス
など、サイバー攻撃を受ける可能性は高くなります。
病院外利用型
病院外利用型とは?
在宅医療などのために病院外へ持ち出される医療機器
です。植込み型ペースメーカや在宅用人工呼吸器などが当たります。
医療機器のネットワーク接続先や設定を勝手に行ってしまう可能性があるため、注意が必要です。
設定について
次にシステム連携をする上で必要な設定について
「医療機器」と「システム連携」をするためには「システム側」のみならず「医療機器」側にも設定があります。
たとえば「心電計」。
「心電計」と「検査システム」、「オーダリングシステム」を連携している施設は多くあると思います。このとき「検査システム」だけではなく「心電計」にも設定があります。「心電計」の設定をしなければデータを飛ばすことができません。
このように「医療機器」側でしなければいけない設定、みなければいけない設定、これらを見ていきましょう。
IPアドレス
まずは一般的な「IPアドレス」について
IPアドレス(Internet Protocol Address)とは「インターネット上の住所」のことです。IPアドレスはすべての機械(パソコン、スマートフォン、ルーターなど)に割り当てられています。
IPアドレスが無いと
- メールをどこに送ればいいか
- 動画データをどこに送ればいいか
などが分からなくなってしまいます。1対1でやり取りする場合、それぞれでIPアドレスが分かってないとやり取りができません。
うーん、よくわからない・・・
では、「ハガキ」で「懸賞」に応募するときをイメージしてみましょう。
※最近ではあまりないかもしれませんが・・・
懸賞に応募するときはハガキに相手の住所を書いてポストに投函します。受け取った相手はハガキに書かれている懸賞の送付先の住所(つまり、ハガキを書いた側)へ懸賞を送ります。
ハガキを書いた側、ハガキを受け取った側の双方がお互いの住所を知っていることになります。この住所が「IPアドレス」になります。
また、「IPアドレス」は重複してはいけません。
それはそうです。同じ住所があったら困ってしまいます。
IPアドレスってどのように表現するの?
「IPアドレス」は「32bitの2進数」で表現され、8bit単位で分割して表現されます。
2進数?
「2進数」とは1と0だけで表現された数字のことです。0~9までの10この数字で表現した数字を10っ進数といいます。
たとえば
「0001」の場合は1、「1000」の場合は8、「1111」の場合は15、と言った具合です。
「bit」は桁数です。8bitということは「10100101」のように1と0が8つある場合を言います。
しかし、「32bit」ということは「32桁」となり、非常に見にくくなってしまいます。そのため「192.168.2.1」のように2進数を10進数になおしたものを普段私たちは見ています。
IPアドレスは「192.168.2.1」のように表現されますがこれを「ネットワーク部」と「ホスト部」に分けることができます。
ネットワーク部?ホスト部?
- ネットワーク部→どこのネットワークか
- ホスト部→どこのコンピュータか
をみています。「ネットワーク部」は大枠、「ホスト部」は詳細になります。
この「ネットワーク部」と「ホスト部」をわけているのが「サブネットマスク」になります。
サブネットマスクってなに?
「サブネットマスク」はネットワーク部を1、ホスト部を0で表現しています。
※つまり2進法
IPアドレス同様、2進数だとわかりにくいため2進法で表したものを10進法になおします。
たとえばIPアドレス「192.168.2.1」、サブネットマスクが「255.255.0.0」の場合、「192.168」が
ネットワーク部、「2.1」がホスト部になります。
実はIPアドレスにも種類があります!!
IPアドレスには「グローバルIPアドレス」と「プライベートIPアドレス」があります。
- グローバルIPアドレス:インターネットに直接つながるIPアドレス
- プライベートIPアドレス:インターネットにつなげないIPアドレス
すべての機械に「グローバルIPアドレス」を割り振ってしまったらIPアドレスが枯渇してしまいます。そのため「プライベートIPアドレス」を使用します。プライベートIPアドレスの使用場所は「家庭内」や「オフィス内」などで使用し、「グローバルIPアドレス」で使用されているIPアドレスも使用することができます。
つまり、「病院内」の「医療機器」の「IPアドレス」は「プライベートIPアドレス」になり、院内で自由に決めることができる反面、「院内」でしっかり管理しないと
「IPアドレス」がわからない!!
という事態になりかねません。
ポート番号
ポート番号とは「コンピュータが通信に使用する識別番号」です。
どういうこと?
たとえば
- メールを送る
- Webページを閲覧する
- ファイルを編集する
これらをコンピュータで行う場合、それぞれ違うプログラムが応答しています。
さきほどの「懸賞に応募するときはハガキを出す」を例に考えてみます。
懸賞に応募するときはハガキを出す際、住所だけ書いても正しく届けられません。「相手の担当部署」が必要になります。
懸賞の対応をしているのが「プレゼント係」なら、プレゼント係行のハガキを書かなければなりません。「経営管理部」だったり「営業部」にハガキが届いてしまったら対応することができません。
担当部署が違うイメージ!!
これは病院内でもそうですね。
看護なら看護師、薬なら薬剤師、リハビリなら理学療法士、検査なら臨床検査技師、レントゲンやCTなどは診療放射線技師、医療機器なら臨床工学技士といった感じでそれぞれ担当が違います。
看護師が「医療機器について詳しく教えて」といわれたら困ってしまいます。
薬剤師が「リハビリについて詳しく教えて」といわれたら困ってしまいます。
コンピュータでもそうです。「メール」、「web閲覧」、「ファイル編集」、それぞれ担当しているプログラムが違います。それらを識別するために「ポート番号」があります。
MACアドレス
MACアドレス(Media Access Control address)とは「ネットワークにつなげるすべての機器に割り当てられている識別子」です。
マクドナルドもapple製品でもありません。
MACアドレスは16進数(1~9までの数字、A~Fまでのアルファベット6個)、12桁で表現されます。
前半の6桁はベンダ内識別子と言われ、メーカーごとに割り当てられ、後半6桁はベンダ内でそれぞれ割り当てます。
IPアドレス、ポート番号が分かっても通信はできません。MACアドレスが必要になります。
なぜMACアドレスが必要なの?
「懸賞に応募するときはハガキを出す」例で考えてみましょう。
「ハガキ」をポストに投函したら終わり、ではありません。そのハガキを回収し、郵便局へ集めます。そこから別支店の郵便局へ配送し、目的の会社のプレゼント係へと届けられます。
いろいろな場所を経由して届けられる、というのがポイントです。
経由する場所が全然違う土地だった場合、最悪の場合、ハガキは届けられないかもしれません。逆に言えば、○○に届けたいなら、いったん○○支店に届けようという経由地(ルート)を決めてあげればいいのです。それが「MACアドレス」になります。
IPアドレスが最終目的地ならMACアドレスは経由地の情報です。
さいごに
今回は臨床工学技士として医療機器とシステム連携する上で最低限知っておきたいことを書きました。心電計や生体情報モニタ、さらには重症経過表とシステム連携するとなると人工呼吸器や血液浄化装置など、さまざまな医療機器とシステム連携する可能性があります。
その際、「医療機器のデータが反映されない」などのトラブルがあった場合、一端医療機器の設定を確認してみましょう。もしかしたらIPアドレスなどが設定されていないかもしれません。
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