今回はVcapについて見ていきます!!
V-capってなに?
Vcapとは「Volmetric Capnography」の略です。

量カプノグラフィです!!
通常用いられるETCO2の波形は縦軸が呼気二酸化炭素分圧、横軸が時間です。一方Vcapは縦軸は変わらず呼気二酸化炭素分圧ですが、横軸が容量になります。

V-capの波形を見ていきましょう!!


こんな波形になります!!
第一相~第三相までは
- 第一相:解剖学的死腔からの呼気の排出のため二酸化炭素を含んでいない
- 第ニ相:解剖学的死腔~肺胞部分の二酸化炭素の排出
- 第三相:肺胞内の二酸化炭素の排出
を表しています。

この波形から何がわかるの?
まずは「呼気の開始」が分かります。
呼気の開始は解剖学的死腔からの排出されるため横軸が時間のカプノグラフィでは、呼気の開始の正確な場所が把握できません。しかし、V-capでは横軸が量であるため、正確に呼気の開始がわかります。

つぎに「有効肺胞換気量」、「解剖学的死腔」、「生理学的死腔」がわかります。

どういうこと?
それでは見ていきましょう。先ほどの図の第三相に接線を引きます。

次に斜線部の面積が等しくなるように垂線を引きます。

第三相の末端は、呼気二酸化炭素分圧です。また、PaCO2とETCO2は若干の乖離があります。ETCO2とPaCO2の2点を図にいれます。

このようになりました。斜線部は同じ面積のため、
- 有効肺胞換気量
- 解剖学的死腔
- 生理学的死腔
がわかります。

ここから「呼気中の二酸化炭素排出量」が分かります。この部分が一回換気量あたりの二酸化炭素排出量になります。

つまり、台形の形をした「有効肺胞換気量」の部分が「呼気二酸化炭素排出量」になります。


V-capはいろいろ使えそう!!
では、どうやって「V-cap」を使うのか、考えていきます。
まず「第一相」について。
第一相は
解剖学的死腔からの呼気の排出のため二酸化炭素を含んでいない
でした。この第一相と、第二相の一部に注目します。つまり先ほどの「解剖学的死腔」について考えていきます。

Airway dead space(気道死腔:VDaw)は解剖学的死腔(Anatomical dead space:VDanat)や器械的死腔(mechanical dead space:VDmech)、人工呼吸器の設定に影響されます。器械的死腔が増える要因として一番最初に思いつくのが「回路の延長、人工鼻の装着、口元フローセンサ」などです。
よって、器械的死腔の増加によって気道死腔が増加します。
次に「死腔換気率」について考えていきます。

死腔換気率ってなに?
死腔換気率とは「一回換気量のうち、どれだけの量が死腔なのか」の割合です。死腔は換気があるのにガス交換が行われないことを指し、健常人では約30%です。

肺胞内で死腔が増加するのはどんなとき?
肺胞内で死腔増加するモノとして一番有名なのは「肺塞栓」です。肺塞栓により血流が途絶える事で換気が行われているにもかかわらず肺胞内でガス交換が行われず、死腔となってしまいます。
次に「第三相」について。
第三相は
肺胞内の二酸化炭素の排出
でした。


第三相の傾きに注目します!!

このように傾きが増大しているときは「換気血流比の不均等:V/Qミスマッチ」が考えられます。
V-capの論文

Vcap関連の論文を見ていきましょう!!
2002年と古い論文になります。この論文ではARDSに対する死亡予測因子を調べています。
この論文では死腔換気率は死亡予測因子だ、という結果がでています。

次はEITと死腔換気率に関する論文!!
この論文ではVcapとEITの比較をしています。
この論文では死腔換気率の変化と測定したEITの変化が同じような変化をした、という結果が出ています。
↓EIT関連の記事
また、PEEPの設定0cmH2Oと14cmH2Oのときの死腔換気率をみたところ、14cmH2Oにすると死腔換気率が増大したという結果。このことにより、高すぎるPEEPは肺胞の過膨張をきたし、結果死腔が増えてしまったと考えられます。

次はPEEP Titrationと死腔換気率に関する論文!!
この論文では死腔換気率がPEEP Titrationに使用できるかどうかを調べています。
PEEP Titrationを実施したとき、死腔換気率が最も低くなる部分(PEEP=10cmH2O)とコンプライアンスがもっとも高くなる部分(PEEP=12cmH2O)という結果がでています。
よって、死腔換気率はPEEP Titrationに使用可能ということになります。

次もPEEP Titrationと死腔換気率に関する論文!!
この論文では肥満患者に対する死腔換気率とPEEP Titrationの関係性を調べています。
RM(リクルートメントマニューバ)を実施した際、SpO2と動的コンプライアンスを測定しています。PEEPをかけていくとSpO2、動的コンプライアンスは上昇していきますが、PEEPを下げていくとSpO2、動的コンプライアンスが急激に低下しています。同時に死腔換気率を測定すると、死腔換気率も同様の動きをしていたことから「死腔換気率」が上がるタイミングが最適なPEEP設定なのではないか、とこの論文では言っています。
↓コンプライアンスに関する記事
↓R/I比の関する記事
さいごに
今回は「Vcap」について記載していきました。
Vcapを測定するには人工呼吸器でCO2をモニタリングしなければならないため、なかなか測定する機会は無いかもしれません。が、「Vcap」事体の歴史は古く、今後さらに発展するかもしれません。
- 【人工呼吸器】EIT【論文】
- 【人工呼吸器】R/I比【論文紹介】
- 【人工呼吸器】NAVA【論文置き場】
- 【人工呼吸器】メカニカルパワー関係【論文】
- 【人工呼吸器】ドライビングプレッシャー:ΔP【論文】
- SpO2の管理はどのくらい?【論文・ガイドライン】
- 【人工呼吸器】P0.1,ΔPocc【論文】
- 【人工呼吸器】経肺圧【論文】
- 【人工呼吸器】PMI(Pmus Index)【論文】
- 【人工呼吸器】AOP【論文】
- 【人工呼吸器】SBT【論文】
- 【酸素療法】HFNC【論文紹介】
- 【人工呼吸器】Vcap(Volmetric Capnography)【論文】
- 【人工呼吸器】VIDD【論文紹介】
- 【人工呼吸器】人工呼吸器の不同調(非同調)
- 【人工呼吸器】リバーストリガー【不同調】
- 【人工呼吸器】PAV【換気モード】

人工呼吸器に関する電子書籍をkindle出版しています。興味のある方は是非!!
コメント