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組織における情報の非対称性【臨床工学技士】

組織・経営
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2022年現在、臨床工学技士法が施行されてから35年程度経過しています。

が、医療職の中では若い資格になります。

そのため、施設内での臨床工学技士の立ち位置は施設ごとで様々だと思います。

そんな臨床工学技士の立場について「情報の非対称性」をもとに考えていきたいと思います。

情報の非対称性とは・・・?

「情報の非対称性」とはいったい何でしょうか。

中古車販売を例に見ていきましょう。

まず、中古車と新車に違いは何でしょうか。

出荷直後の新車とち違い、中古車は「正確な品質情報が買う側にはわからない」ところです。

同じ車種、経年の中古車でも

  • 故障歴
  • 事故歴

など、1台1台の本当の価値は異なります。そして、そういった情報は買い手にはわかりません。

もちろん売り手側は本当の価値を知ってていますが、全ての情報を開示する必要はありません。

このような場合、

売り手は特定の情報持っている一方、買い手はその情報を持ちません。

これ「情報の非対称性」と言います。この時、売り手側が知っている中古車の本当の価値、状態は私的情報といいます。

アドバース・セレクションとは・・・?

私的情報をもつ売り手の合理的な行動を考えてみます。

売り手が合理的ならばその情報を隠しつつ、より高い値段を買い手に提示するはずです。

このような行為を虚偽表示と言います。

売り手
売り手

(本当の価値は100万円だけど)この車の価値は150万円です。

買い手側は売り手が情報を隠しながら本当の価値より高い値を提示する可能性があるため、売り手の価格提示を信じません。

買手側
買手側

本当の価値より高い可能性があるな。

一方、正直な営業マンがいた場合、150万円の価値がある中古車をそのまま150万円で販売しようとします。

正直な売り手
正直な売り手

この車の価値は150万円です。

こうなった場合でも買い手は正直な営業マンの提示額を鵜呑みにできません。

買手側
買手側

本当の価値より高い可能性があるな。

そうなると正直な営業マンは120万円に値下げしても儲からないため、取引をしないことになります。

売り手
売り手

(本当の価値は100万円だから黒字)120万円で売ります。

正直な売り手
正直な売り手

120万円だと赤字だから撤退しよう。

このように、正直な営業マンが市場からいなくなり、虚偽表示をする営業マンだけが残る「悪貨が良貨を駆逐する」状態になってしまいます。

このような状態を「アドバース・セレクション」と言います。

アドバース・セレクションの例

  • 就職市場

就職市場は情報の非対称の典型と言えます。

企業側は志望者の本当の能力、真面目さは実際に働かないとわかりません。

逆に志望者は自身の本当の能力、性格を知っています。つまり私的情報を持っている状態と言えます。

また、自分の能力、性格を過剰に脚色(虚偽表示)する可能性もあります。

  • 保険

買う側が私的情報を持っている場合の代表例は保険です。

  • 注意深く事故を起こしにくい人
  • 不注意で事故を起こしやすい人

保険会社はこれらが分かりません。この場合、買い手側が私的情報を持っていることになります。

また、自分が不注意で事故を起こしやすい人ほどとわかっているほど保険に入りたがり、保険会社側は加入者が本当に不注意かどうかわからないため、すべての人に高い保険料を設定しなければなりません。

私的情報を持たない人の対処法

  • スクリーニング

実は対処法は単純で

  • 保険料は安いが事故になった時の保証額も安い
  • 保険料は高いが保証額も高い

の2種類を提示すれば、顧客が勝手にみずから私的情報に基いて行動をとることになります。

私的情報を持つ人の対処法

  • シグナリング

自分の高い能力、真面目な性格を企業側に信じてもらいたい場合どうすればいいでしょうか。

代表的なシグナルは「学歴」になります。

企業は志望者の能力、性格などはわからないが「学歴」なら企業側はわかるため、企業は「学歴」を参考にします。

そのシグナルには裏付けが必要になります。

「学歴」をシグナルとして足りえる理由は

その大学に入るのが難しく、そこに合格したということはその人に学力と真面目さがある

ため、「学歴」は裏付けとなると言えます。

臨床工学技士で考える

施設内の臨床工学技士の立場について「情報の非対称性」という観点から考えてみましょう。

臨床工学技士の業務で「情報の非対称性」が発生しやすいのは個人的には「機器管理」だと思います。

血液浄化や人工心肺などはそもそも多職種と協力して業務を行っている、つまり現場にいるため、「情報の非対称性」は発生しにくいと考えられます。

一方「機器管理」は「機器管理室」中心で業務を行うことになります。

そのため、現場と臨床工学技士の間における情報の齟齬が発生しやすくなります。

例えばセントラルモニタの定期点検を考えてみましょう。

臨床工学技士視点では

臨床工学技士
臨床工学技士

機器の保守点検は機器を安全使用する上で非常に重要であり、さらには機器の寿命を延ばしたり、機器故障の早期発見につながったりするため定期点検を行いたい。

と考えたとします。逆に現場では

現場
現場

定期点検をするためにわざわざ使用中の機器を入れ替えるのは安全上問題がある。代替え機がない状態で定期点検を行うとなると、その間モニタリングできないのは論外。そもそもそんな時間的余裕もない。

もしこのような状態が起きたのであれば「情報の非対称性」が原因で発生していると考えられます。

現場で点検に協力的な人がいたとしても、時間的余裕がなく、そもそも協力することが面倒であれば、いずれ協力的な人は淘汰されてしまうと考えられます。

「情報の非対称性」を考えたうえで、押し付けのような提案をしても相手には通じないということになります。

さいごに

今回は「情報の非対称性」について記載しました。

こういった「情報の非対称性」はどこにでも起こりうると考えられます。

少しでもみなさんの一助になればと思います。

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