医療機器メーカーの仕事とはいったいどのような職業でしょうか。
また、臨床工学技士が医療機器メーカーに就職した時にメリットはあるのでしょうか。
まずは医療機器メーカーがどのような仕事をしているのか、ざっくり確認していきましょう。
医療機器メーカーについて

営業
病院へ製品を進めたり、納品したりします。
病院に勤めている方が一番会う医療機器メーカーの人は「営業」。
その他、トラブルの一次対応なども行ったりします。
サービス
いわゆる、医療機器のメンテナンスを行う人。
保守契約などを結んでいると年1回ないし2回程度、医療機器のメンテナンスをします。
↓サービスエンジニアについて
アプリケーションスペシャリスト
製品紹介や学術集会への参加、医療機器の取り扱い説明、論文説明等をする人。
「クリニカルスペシャリスト」や「営業サポート」なんて言ったり。
呼び方はメーカーによって様々だと思います。
イメージ的には「営業」と「サービス」の間の位置づけ。
ざっくり言うとこのような感じです。
臨床工学技士が「医療機器メーカー」に就職した時のメリットはあるの?
臨床工学技士の資格はメリットになる?

結論から言うとメリットはあります。
「営業」、「サービス」、「アプリケーションスペシャリスト」業種を問わず、メリットはあります。
医療機器に関する基礎知識があるため、臨床工学技士が医療機器メーカーに入っても基礎知識で苦労することは少ないと思います。
その点は新卒、中途採用問わず有利になります。
しかし、医療機器メーカーで必要とされる知識は
- 医療機器に関する基礎知識
+
- 製品情報
になります。
そのため、実際に現場で機械を使ったことがない新卒採用の場合、入社後に勉強が必要になります。
また、ここでいう製品情報とは「使い方」や「製品スペック」だけではありません。
- 他社と比較してどうなのか
- 担当エリアでどのくらい採用されているのか
- 施設ごとの医療機器採用理由
- 臨床使用した時の「いい点」、「悪い点」
など、勉強・調査することは盛りだくさん。
そして、ここが「新卒採用」と「中途採用」の差になります。
自社装置を使ったことがある状態で中途採用された場合、
- 臨床使用した時の「いい点」、「悪い点」
が分かっている状態
自社装置を使ったことがない状態で中途採用された場合、
- 他社と比較してどうなのか
が分かかりやすい状態
となるため、使用歴は自社・他社問わずメリットになります。
しかし、「新卒採用」の場合、上記メリットを実臨床で学ぶ機会がほとんどありません。
そのため、実際に医療機器が使われている状態がイメージしにくくなってしまいます。
つまり、「新卒採用」の場合は周りと比べてスタートダッシュが効きます。
が、周りの新卒は英語が得意だったり、経済学を学んでいたりと「医療」以外の知識が豊富なケースがあります。
そのため、一概に「新卒」有利になるとは言い切れません。
例えば、家電屋さんでパソコンを売るとしたときに、
- パソコンを使ったことがある人
- パソコンを使ったことがない人
どちらが売れるでしょうか。
両方とも製品に関する知識量が同じだったとしても
- パソコンを使ったことがある人
のほうがたくさん売れると思います。
それは、パソコンに関する一次情報(実体験など)があるためです。
同じことが医療機器でも言えます。
現場を知らない人より、現場を知っている人のほうが説得力は増します。
そのため、「製品知識」のみならず「臨床」を知る必要があります。
「臨床の知識」と「製品情報」を結び合わせて説明することで実際に使える「一次情報」になります。
そのため、「中途採用」の場合でも、「臨床」の知識が少ないと苦労することになります。
会社側からしても「中途採用」で「臨床工学技士」を採用する場合、「臨床」経験を見込んで採用しているからです。
いろいろな施設を見ることができる

医療機器メーカーは「営業」、「サービス」、「アプリケーションスペシャリスト」業種を問わず、たくさんの施設にいきます。
そのため、おのずとたくさんの施設を見ることができます。
- どのような考え方で医療機器を更新しているのか
- どのような使い方をしているのか
たくさんの施設をみることで臨床工学技士としての視野が広がると思います。
これは、病院で仕事をしているとなかなかできません。
医療機器メーカーで働くことで得られるメリットの1つだと思います。
病院とメーカー、何が違うの??
「営業」、「サービス」、「アプリケーション」どれをとっても最終的には売り上げが大事になってきます。
メーカーは製品を売る
ことが目的になるため、
- どうすれば売れるのか
を考える必要があります。
病院勤めの臨床工学技士は自分の技術や知識を患者さんのために使います。
言わば、病院に対して「技術」、「知識」を売っています。
対してメーカーは病院に対して「製品」を売っています。
「製品」を売るために「技術」や「知識」を使うわけです。
つまり、「技術」・「知識」をそのまま売るのか、はたまた「技術」、「知識」は売るためのツールなのか
が大きく違うポイントになります。
病院勤めであれば「技術」・「知識」を磨けばそのまま評価される傾向にありますが
メーカーは「技術」・「知識」をどう使うかが主眼になります。
そのため、「技術」・「知識」が少なくてもたくさん売り上げる人もいれば、「技術」・「知識」が多くても売り上げが伸びない、宝の持ち腐れ状態になることもあります。
そしてつきまとうのが「ノルマ」。
「ノルマ」を達成していなければありがたいお言葉を頂戴し、「ノルマ」を超えていればフィードバックがある。
頑張った分だけ見返りがあるのもメーカーと病院の違いとなります。
また、個人目標が明確になっていることも病院とは違う点だと思います。
医療機器メーカーでつらいことは?
「売り上げが上がらないとき」
これは想像しやすいと思うので多くは語りません。
同期と話が合わなくなってくる
これは個人的には結構深刻な悩みです。
ここで言う同期は学校の同級生です。
臨床工学技士は大多数が病院に就職します。
そのため、同窓会やらなんやらで話す際、話が合わなくなってきます。
臨床工学技士の業務は
- 血液浄化
- 人工呼吸
- 人工心肺
- 機器管理
- 不整脈
- 内視鏡
などなど多岐にわたります。
しかし、それら製品を包括して販売している医療機器メーカーは存在しません。
そのため、それら業務をしている人たちと話が合わなくなってきます。
また、臨床の話をメインになると、だんだんとついていけなくなります。
そのため、若干の疎外感を感じたりします。
いつ連絡がくるかわからない
医療機器メーカーに勤めると個人用のスマートフォンが支給されます。
24時間365日連絡が取れるような状態、つまり病院でいう、常にオンコール
みたいな状態です。
これでは気が休まりません。
休日や深夜に連絡が来たりします。
これは単純につらいです。
基本的には連絡は来ないですが、連絡がきたときはそれほど緊急度が高いと言えます。
さいごに
医療機器メーカーのお話をさせてもらいました。
昨今の医師の働き方改革による臨床工学技士の業務拡大により、着々と臨床工学技士の業務幅が広がっています。それが、医療機器メーカーにまで広がればいいなと思っています。
臨床工学技士が当たり前のように医療機器メーカーに就職することで、病院内外から医療機器を通じて病院を支えることができるためです。
少しでも医療機器メーカーに興味のある方の参考になればと思います。
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