今回は人工呼吸器の換気モードNAVAについて。
NAVAってなに?
NAVAモードとは
NAVAとは「Neurally Adjusted Ventilatory Assist」の略です。
カテーテルを鼻もしくは口から挿入し、カテーテルの先端を胃の中に挿入します。
カテーテルには電極が付いています。食道内に留置されているカテーテルについた電極にて横隔膜の活動電位(Edi)を測定することで、「トリガ」、「換気」のサポートをする自発呼吸の換気モードです。
Ediカテーテルは9個の測定用電極と1個の不関電極があります。先端には経管栄養を投与する穴が開いています。
この電極により、Edi波形を取得することができます。
※人工呼吸器グラフィック波形にもEdi波形が追加され表示されます。
Ediは活動電位が低く、数μV程度です。とても小さい活動電位を測定しているため、電極位置(つまりカテーテル位置)が重要になります。
電極位置はどのくらいが良いの?
↓カテーテル位置に関する論文がこちら。
この論文はEdiカテーテルの電極において、真ん中の電極が活動電位を取得しているときが良い、という結果が出ています。
NAVA特有の設定ってあるの?
NAVAには
- Ediトリガ
- NAVAlevel
という2つのNAVA特有な設定があります。
Ediトリガはトリガ感度、NAVAlevelは換気に関わる指標です。
NAVAlevelってなに?
NAVAモードで換気した時の最高気道内圧は
最高気道内圧=(Edi peak – Edi min)×NAVA level+PEEP
となります。
- Edi peak:横隔膜の最大活動電位
- Edi min:横隔膜の最小活動電位
であり、言い換えると
- Edi peak:横隔膜が収縮したとき→息を吸ったとき
- Edi min:横隔膜が弛緩したとき→息を吐いたとき
となります。
つまり「Edi peak-Edi min」とは
息を吸ったときの横隔膜活動電位 – 息を吐いたときの横隔膜活動電位
となります。
よって「Edi peak-Edi min」は「換気によって発生した横隔膜の活動電位」と言えそうです。
つまり
最高気道内圧=換気によって発生した横隔膜の活動電位×NAVAlevel+PEEP
となります。よって、
- 換気によって発生した横隔膜の活動電位
- NAVAlevel
が換気圧に関わっていることが分かります。
Edipeakは5~15μV、Edi,minは1μV以下が良いとされています。
NAVAlevelは高すぎると人工呼吸器からのサポートが過剰に、逆に低すぎると人工呼吸器からのサポートが過小になる可能性があるため注意が必要です。
そんなNAVAに関する論文紹介。
NAVAの論文紹介
まずは同調性に関する論文から。
横隔膜の活動電位を測定してるから同調性がよさそうだけど・・・
NAVAとPSVを比較した論文。
小児ARDS患者12名を対象にPSVと比較してNAVAは吸気・呼気トリガー遅延が改善し、非同調が改善した結果。
やっぱり同調性は改善するのか!!
では次にNPPVとNIV-NAVAの再挿管率を比べた論文。
NPPVと比べNIV-NAVAが最高気道内圧が低値であり、120時間後の再挿管率はNIV-NAVAが低かったという結果。
また、NasalCPAPとNIV-NAVAの再挿管率を比べた論文もあります。
こちらもNasalCPAPとと比べNIV-NAVAも72時間後も再挿管率が低かったという結果。
NIV-NAVAは再挿管率が低いのか!!
では次にNAVA levelに関する論文。
NAVA levelは換気に関わる設定であり、NAVA換気中の最高気道内圧は
最高気道内圧=(Edi peak – Edi min)×NAVA level+PEEP
になります。この式を見る限りNAVA levelを上げ続ければ最高気道内圧も上がり続けそうですが・・・
それを確かめた論文がこちら。
NIV-NAVAにおいて、NAVA levelを0.5ずつ4.0まで上げていき、吸気圧とEdiを測定した論文。
NAVA levelを上げていくと、ある点を過ぎると最高気道内圧が上がらなくなります。この点をブレイクポイントと言います。
そのため、むやみやたらとNAVA levelを上げればいいというわかけではないということが分かります。
NAVA levelを上げていったときの一回換気量はどうなるの?
NAVA levelを上げていったときの一回換気量に関する論文がこれ。
NAVAにおいてNAVA levelを上げていったとき、NAVA levelを2.5以上にしても一回換気量は増えない結果。この論文でもブレイクポイントがあることが分かります。
次にNAVA(Edi)の波形について。
Ediの波形って?
- Phasic:正常に呼吸ができたおり、規則的なEdi波形
- Central apnea:無呼吸によりEdiが現れず、バックアップ換気になるもの
- Tonic burst:不規則な上昇、下降するもの
これらに加えて近年では「Irregular low voltage」という波形があります。
- Irregular low voltage:Edipeak<1.5μVの低い波形でNAVA駆動
Irregular low voltageになると、Ediが低いにもかかわらずNAVA換気を行ってしまう(バックアップ換気にならない)ため、注意が必要です。
次はNAVAの快適性について。
この論文はNIVとNIV-NAVAを比べた論文。
NIVと比較しNIV-NAVAはPIP、FIO2が低値、SpO2低下の頻度・時間が低値、さらには患児・医療者の動きも低値になるという結果。
患児のみならず、医療従事者の負担も少なくなりそうです。
成人領域におけるNAVAはどうなの?
呼吸不全で挿管された128名を対象として、NAVAとPSVを比較しています。この論文ではPSVと比較しNAVAで非同調が少ない、という結果がでています。
気管切開をした成人61名を対象として、NAVAとPSVを比較しています。この論文でもPSVと比較しNAVAで非同調が少ない、という結果がでています。
P/F比250程度の成人306名を対象に、NAVAとA/C・PSV・PRVCを比較しています。
NAVAを使用した方が人工呼吸器装着日数は増加しますが、抜管失敗は少ない、という結果がでています。また、トータルの人工呼吸器管理日数はNAVAのほうが少ないという結果が出ています。しかし、生存率は差が無かった、という結果です。
この論文ではSBT失敗した患者、SBTは成功したが再挿管になった患者99名を対象にNAVAとPSVを比較した論文。PSVと比較してNAVAは
- 28日後に人工呼吸器を装着している割合が少ない
- 28日後の人工呼吸器離脱率が高い
という結果がでています。
成人でもNAVAが使われてきている!!
↓SBT関連の記事
さいごに
今回はNAVA関連の論文を紹介しました。
NAVAは成人領域よりも小児・新生児で活躍している換気モードになります。
今後は小児・新生児領域では必須の換気モードになりかもしれません。
※カテーテルが高く、現状保険もとれないため難しいかもしれませんが・・・・。
今後はNAVAとEIT!!と言われるかもしれません。
ついにNAVA特化の本が発売!!
NAVAワークショップ実行委員会の方々が執筆しています!!
人工呼吸器に関する電子書籍をkindle出版しています。興味のある方は是非!!
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