「鬼滅の刃」で重要なキーワードである「全集中の呼吸」。今回は「全集中の呼吸」と「トレーニング」について呼吸生理の視点から考えていきたいと思います。
全集中の呼吸とは?

全集中の呼吸?
「全集中の呼吸」とは何なのか、コミックス1巻を参照してみます。
コミックス1巻には全集中の呼吸とは
とにかく肺を大きくし、血の中にたくさん空気を取り込み、体中の血の巡りと心臓の鼓動を早くすることによって体温が上昇し人間のまま鬼のように強くなれる
と記載されています。

全集中の呼吸をするためにどんなトレーニングをしたの?
ではコミックスで行っていたトレーニングについて見ていきましょう。
呼吸とは
と、その前に「呼吸」について。

呼吸ってなに?
辞書で調べてみると
息を吸ったり吐いたりすること。
goo辞書より引用
と、一番最初に書かれています。

では、さらに少し詳しく見ていきます。
肺の中に空気を取り込むためには「横隔膜」が重要になります。横隔膜が収縮するとことで肺に中に空気が入り、弛緩することで空気が呼出されます。いわゆる「腹式呼吸」です。

次に、肺の中に入った空気から酸素を血液の中に取り込み、不要になった二酸化炭素を血液から肺に出す必要があります。

血液の中に酸素を取り込むためには「ヘモグロビン」が大事です。「ヘモグロビン」は酸素をキャッチすることができます。「ヘモグロビン」が酸素をキャッチすることで血液に中に酸素を取り込むことができます。

酸素を全身に届けるために重要なのが「心臓」です。心臓が拍動することで全身に血液を届けることができます。

臓器などに届けられた酸素を使ってエネルギーを作りだし、その結果二酸化炭素が産生されます。

以上がおおまかな呼吸の流れになります。
鱗滝左近次のトレーニング

最初はどんなトレーニングしたの?
まずはコミックス1巻の鱗滝左近次のトレーニングから見ていきます。
まずは「山の上り降り」を行っています。

山の上り降りにはどんな効果があるの?
では見ていきましょう。
大気中の酸素の割合は約21%、窒素の割合は78%です。

そういえば、山の上は酸素が薄いって聞く気がする・・・
山の上だろうと酸素の割合は変わりません。

じゃあなんで酸素が薄いって聞くの?
それに関係するのは「気圧」です。1気圧1013hPa(ヘクトパスカル)です。山の上に行けば気圧は下がります。酸素の割合が約21%だったため、酸素の分の圧力(酸素分圧)は約212hPa(約160mmHg)となります。たとえば山の上などの高いところの場合、気圧が低く、結果的に酸素分圧を低くなってしまいます。

酸素の割合は変わらないけど、酸素の量が少ないイメージ
しかし、山の上などに住んでいる人や、そもそも都市が高地の場合もあります。

高地には住めないの?
低い酸素分圧の場所にいることで「高地順応」がおきます。「酸素」が少ない分、酸素をキャッチする「ヘモグロビン」の量が増加することで人体は対応します。

山の上り降りによる「心肺機能」のトレーニングのみならず、「ヘモグロビンの量」を増やすことにより、「呼吸のトレーニング」を行っていたと言えます。
機能回復訓練
次はコミックス6巻のトレーニングについて。

機能回復訓練ではどんなトレーニングしたの?
機能回復訓練では「全集中・常中」のトレーニングをしています。

実際にどんなトレーニングしたの?
具体的に「呼吸」に関するトレーニングはどんなことしたのでしょうか。それは「吐いた息でひょうたんを割る」でした。
これは息を吸う・吐くのトレーニングをしています。
息を吸う・吐くには横隔膜の収縮・弛緩が重要でした。しかしそれは安静時呼吸の場合です。安静時呼吸ではなく、努力呼吸の場合、吸気では横隔膜+肋間筋や斜角筋、胸鎖乳突筋などの筋肉が重要になります。一方呼気では腹筋などが重要になります。
では、機能回復訓練はこれら筋肉のトレーニングを主目的としているのでしょうか。

今回のトレーニングは「常中」です
安静時でも強い「吸う・吐く」をすることが目的のため、本トレーニングは「横隔膜の強化」が最大の目的となっています。
さいごに
今回は「全集中の呼吸」に着目して呼吸について考えてきました。「全集中の呼吸」は
とにかく肺を大きくし、血の中にたくさん空気を取り込み、体中の血の巡りと心臓の鼓動を早くすることによって体温が上昇し人間のまま鬼のように強くなれる
とされています。酸素をたくさん取り込み、エネルギー量を増加させることが「全集中の呼吸」です。
- 鱗滝左近次のトレーニング
- 機能回復訓練
では、「全集中の呼吸」を強化するためのトレーニングをしていたことが分かりました。

漫画やアニメを見るとき、こんな視点でみるのも面白いです。
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