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【臨床工学技士】組織の記憶力を高める

組織・経営
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臨床工学技士は現在、およそ22000人が病院で働いています。

1病院当たり平均7人程度、人数が多い施設では40人50人が働いています。

そうなると立派な組織です。

さらに臨床工学技士の業務は大きく分けると

  • 呼吸
  • 代謝
  • 循環
  • 機器管理

になります。

※近年では内視鏡。医療安全、集中治療など新しい分野にも参入していますが、、、

それら業務を書く臨床工学技士が専任で行っている施設は少ないのではないでしょうか。

ほとんどの施設がローテーションで行っていると思います。

これだけ多岐にわたる業務をローテーションで行っていると、組織としてまとまり、組織力を向上するのも一苦労です。

くろねこ
くろねこ

組織としてうまくいかないなー。組織として成熟しないなー。

こんな悩みも当然あると思います。

では、どうすれば組織力が付くのでしょうか。

経営学の観点から見て、臨床工学技士の組織に当てはめていきましょう。

経営学からみた組織の記憶力

組織学習の循環プロセス 個人→経験

組織学習で重要なことは「経験」です。

何かしらを「経験」することで「」が身に付きます。

では、どうすれば「経験」できるでしょうか。

それは「行動」することです。

人や組織は何かしらの意図をもって「行動」します。

その「行動」の結果、「経験」ができ、「知」へと昇華できます。

人が「経験」をする上で、「限定された合理性」を前提としています。

「限定された合理性」とは

人は合理的に意思決定するが、その認知力・情報処理力には限界がある

とされています。

例えば、

自分がとりうる選択肢が100あったとしても、10程度しか認知できず、その選択肢をとった結果どうなるかも十分に見通せない。

といった具合です。

組織は限られた認知を広げるために「経験」をします。

臨床工学技士に当てはめると・・・

臨床工学技士の業務は多岐にわたるため、昨日は血液浄化、今日は集中治療、明日は機器管理など、その日その日で行う業務が違ってきます。

色々な分野で業務を行い、多職種とかかわりを持つことで個人が経験でき、認知を広げることができます。

組織学習の循環プロセス 経験→知

そしてその「経験」を新たな「知」にするために

知の創造、知の移転、代理経験があります。

  • 知の創造

経験で得た知と既存知から新しい知を生み出すこと。

  • 知の移転 

技術提携等、外部から知を手に入れること。

  • 代理経験

他者の経験を観察することから学ぶこと。「人のふり見て我が降りなおせ」。

臨床工学技士に当てはめると・・・

しかし、個人が経験できる症例などがバラバラになってきます。よって各業務における知識や経験の差が大きくなると思われます。そのため、「代理経験」が非常に重要になってきます。経験したことある人から情報収集して、自分の経験値とするのです。

組織学習の循環プロセス 知→組織

個人で得た知を組織に還元することで「組織の記憶」となります。

組織に記憶されなければ学習したことにならず、前進がありません。

組織の記憶プロセスは更に

  • 知の保存
  • 知の引き出し

に分けることができます。

知の保存

  1. 個人がそれぞれに脳内へ記憶
  2. モノ・ツールに保存
  3. 独自の行動習慣、決まり事として埋め込むこと

知の引き出し

いくら組織に知がたまっていても、それを使えなければ「宝の持ち腐れ」になってしまう。

そのため、知を有効に引き出すことが必要になります。

そのためには、シェアード・メンタル・モデル(SMM)トランザクティブ・メモリー・システム(TMS)があります。

シェアード・メンタル・モデル(SMM)

シェアード・メンタル・モデルは

組織メンバー間で、どれくらい認知体系がそろっているか

ということになります。どういうことでしょうか。

言い換えると

仕事などに関する様々な情報・知見が頭の中でどう整理されているか、どう描かれているかの認知の体系

です。これがメンバー間でそろっているほど組織のシェアード・メンタル・モデルがそろっていると言えます。

シェアード・メンタル・モデルは更に2つにわけることができます。

タスクシェアード・メンタル・モデルチームシェアード・メンタル・モデルです。

  • タスクシェアード・メンタル・モデル

仕事、技術、設備などのメンバーの共通認識。

作業の目的は?

トラブル対応の優先順位は?

などの共通認識です。

  • チームシェアード・メンタル・モデル

メンバー同士の役割分担、好み、強み、弱みなどの共有。

基本認識の共有が無ければ、各メンバーが優れた知を保持していても効果的に発揮されません。

臨床工学技士に当てはめると・・・

シェアード・メンタル・モデルはローテーション業務が多い臨床工学技士の組織では非常に重要です。

若手からベテランがローテーションで業務をする中で、プライミングなどからトラブル対応までのやり方、対応方法を共通の認識を持つ必要があります。

そのためには症例報告やマニュアルなどに形を残して、教育、ディスカッションなどで実際の組織のルールにして、実施するのが当たり前の状態にすることが理想です。

トランザクティブ・メモリー・システム(TMS)

  • トランザクティブ・メモリー・システム

「組織内の知の分布」

「組織メンバーが他のメンバーの誰が何を知っているか」を知っていることです。

何をしっているかだけではなく、だれが知っているかが重要になります。

組織にいるからこそ分業が可能。専門分野だけを覚えることができ、記憶の分業をしようという考え方。

しかし、それを実施するためには「専門性」、「正確性」が重要になります。

  • 専門性

記憶の分業をすることで知の専門性を高めることができることで、各々の得意分野の専門知識を各自で保存することができます。

  • 正確性

各自が「誰が何を知っているか」を正確に覚えていなければ、知が適切に引き出せません。

それではトランザクティブ・メモリー・システムを高めるためにはどうしたらいいでしょうか。

  • Face to Face

1つはFace to Faceがいいとされています。

何故でしょうか。

確かめるためにこんな実験がありました。

34組のカップルに共同作業をしてもらい、その成果およびトランザクティブ・メモリー・システムの高さを計測しました。

そのときカップルを以下3タイプ

  • 共同作業の際に、互いの顔を見て会話できるカップル
  • 会話はできるが、顔を見ることができないカップル
  • 会話はできないが、互いの顔を見ながら書面の交換で意思疎通するカップル

に分けました。

すると、会話はできるが、顔を見ることができないカップルのトランザクティブ・メモリー・システムが低くなったそうです。

そのため、Face to Faceが良いとされています。

  • ブレーンストーミング

ブレーンストーミングはアイデアを自由に出す手法の一つで、簡単に言うと

批判せず、自由にアイデアを出し、質より量を求め、アイデアを結合する

手法です。

ブレーンストーミングを実施する上で、たとえば

  • 10人の集団でアイデアをだす
  • 10人それぞれで個別にアイデアを出したあと、足し合わせる

上記2つを比べると10人それぞれで個別にアイデアを出したあと、足し合わせるが、質および量が高くなります。

また、ブレーンストーミングの目的はアイデアを出すのみならずトランザクティブ・メモリー・システム向上とすると

ブレーンストーミングが終わった後、部門を超えた交流を継続することが大事になります。

臨床工学技士に当てはめると・・・

組織の人数が多い施設で特に有効。各業務を専門に行っているスペシャリストの集い。

各々が専門性をのばし、だれが何を専門にしているかを把握する。

そして、それぞれの部署でしっかりとブレーンストーミングなどを通して共有する。

さいごに

今回は経営学の観点から臨床工学技士の組織力を高めるための方策について記事にしました。

今回記事を書いていて、やっぱり組織って難しいなと感じました。

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