人工呼吸器関連の論文紹介。今回はEITについて。
EITとは
まずはかるく「EIT」について。
EITは「Electrical Impedance Tomography」の略で、日本語では電気抵抗の断層撮影です。
息を吸ったとき、吐いたときで肺の中の空気容量が違います。
空気による電気抵抗の変化を画像化し、その画像をたくさん作ることで動画のようにモニタリングすることができます。
肺のどこに空気が入っているかがわかります。
そんなEITの論文紹介。
肺のどこに空気が入っているかわかったら便利そう!!
EITに関する論文
まずはこの論文。
EITの原理から用語などをまとめた論文。
- 電極の位置は測定開始したら変えてはダメ
- 姿勢や換気モードによって所見が変わるため、モードなどは記録しておく
- 一対の電極に微小電流を流し、残りの電極で電圧を測定する
- フレーム:電流の印加と電圧測定の1サイクルでとれるデータのこと
- 1秒で50フレーム
- 肺内にガスがあると導電率が低下し、血流や体液などは導電率を上げる
など、基礎的なところから網羅されています。
引用文献が100個あり、非常にボリュームが多い論文のため、読むのに一苦労ですが。
EITを使ったことがない人などにおすすめの論文です!
続いての論文はこれ。
ARDSの患者さんに対して高いPEEP、低いPEEPをかけたときにEITをモニタリングして、肺のどこが広がっているかを見ています。
高いPEEPをかけると肺の換気領域は背中側になっており、PEEPを低くしていくと換気領域がお腹側にシフトしていっています。
高いPEEPにより、正常な肺胞が過膨張して換気ができなくなり、虚脱した肺胞が開通した背中側での換気がメインになり、逆に低いPEEPだと背中側の肺胞は虚脱しているためお腹側の換気がメインになった可能性があります。
そのため、「無気肺」と「過膨張」が肺胞が機能する領域に関係していると言えそうです。
PEEP設定にEITは使えそう!!
次の論文はこれ。
COVID-19:ARDSに対して腹臥位と仰臥位でそれぞれPEEPを変えていき過膨張するかどうかを確認した論文。結果は腹臥位+高PEEPで過膨張をきたしたという結果。
そうなるとARDSにたいして腹臥位+高PEEPはいけないということになってしまいます。
なんかイメージとちがうな。
そこで次の論文。
COVID-19に対してR/I比(Recruitment-to-inflation ratio:肺胞を拡げることができるかどうかの指標)を用いてHigh RecruiterとLow Recruterに分類。
↓R/I比関連の論文紹介
低いPEEPと高いPEEP、腹臥位と仰臥位のそれぞれの組み合わせ
- 低PEEP+仰臥位
- 低PEEP+腹臥位
- 高PEEP+仰臥位
- 高PEEP+腹臥位
でP/F、呼吸コンプライアンス、過膨張、無気肺の測定を実施。
肺胞が開通しやすいかどうかで過膨張が起きるかどうかの確認!!
Recruitablityがある場合は高PEEP+仰臥位で過膨張を起こし、高PEEP+腹臥位では酸素化が良好になったという結果。
Recruitablityがない場合は低PEEP、高PEEPの腹臥位で酸素化が良くなるが、高PEEPは過膨張が発生し呼吸コンプライアンスが低く、無気肺は少ないという結果。つまり、Recrutablityが無い場合は低PEEP+腹臥位が良い。
Recrutablityを加味したうえでPEEPを設定しないといけないのか!!
と、このように肺のガスの出入りをモニタリング、できることで現状の最適なPEEPを決めることができそうですね。
ただ問題はEITを測定できる装置の値段。お高いため、おいそれと購入できないのが残念。
さいごに
今回はEITの論文を紹介しましたが、EITを調べるとたくさんの論文が出てきます。
今後はARDSに対してEIT+R/I比でPEEPを決めるやり方が主流になるかもしれませんね!!
新しい論文・面白い論文など、見つけたら追加していきます。
人工呼吸器に関する電子書籍をkindle出版しています。興味のある方は是非!!
コメント