
HFNCってなに?
HFNCとはHigh-Flow Nasal Cannula(HFNC) Oxygen Therapyのことです。
- ネーザルハイフロー
- ハイフローセラピー
これらもHFNCをさします。
ネーザルハイフローは製品名、ハイフローセラピーは診療報酬上の表記で使用されています。
- ネーザルハイフロー→Fisher&Paykel社のオプティフローの製品名
- ハイフローセラピー→診療報酬上の記載
HFNCの構成は以下のような感じです。

HFNCの基本構成
- 鼻カニューラ
- 回路
- 加湿チャンバ
- 加温加湿器
- 酸素ブレンダ

機種によって若干違ったりします。
これらを使用するHFNCは以下のような特徴があります。
特徴
- 高流量
- 加温加湿
- 鼻カニューラ(※気管切開用もあり)

では、これら特徴を見ていきましょう
HFNCの特徴

HFNCの特徴については以下の論文にまとめられています。
まずは「高流量」でガスを供給することによる利点です。
1.酸素濃度を設定できる
酸素濃度を設定できる酸素ブレンダを用いて高流量でガスを送ることによって、「設定した酸素濃度でガスを供給できる」という利点があります。
HFNCは30L/min~60L/ minと高流量でガスを送気します。そのため、送気したガスだけで患者さんが吸う量をまかなうことができます。通常の鼻カニューラや酸素マスクでは酸素流量が低いため、大気中のガスを吸い込んでしまいます。大気中の酸素の割合は21%のため、100%酸素でガスを送っていても、実際に患者さんが吸っている酸素の割合は低くなってしまいます。
2.PEEP様効果
高流量でガスを送気しているため、陽圧がかかります。流量が多ければかかる圧も高くなりますが、口を開けていると効果がうすくなってしまいます。よって、PEEP様効果を得るためには「口を閉じた状態で高流量」のガスを送気することが大事になります。が、人工呼吸器と違いHFNCは気道内圧をしっかりとはモニタリングしておらず、圧力を設定できるわけでもないので「PEEP様効果」とされています。

この論文では口を閉じればPEEP様効果は得られるが、口を開けているとPEEP様効果が得られないという結果がでています。

この論文ではHFNC中では吸気と呼気で圧力変動が大きい、という結果がでています。
3.CO2ウォッシュアウト
つねに高流量でガスが供給されるため、解剖学的死腔(ガス交換されないところ)のガスが供給されたガスに置き換わります。そのため、CO2の再呼吸量が少なくなります。これをCO2ウォッシュアウトや洗い出し効果と言います。

死腔のウォッシュアウトに関連する論文です。流量が増えるとウォッシュアウトできる量も増えるという結果。

COPDやIPFの患者さんにHFNCを使用するとPaCO2が低下するという結果
HFNC関連の論文

HFNCの論文と言えばコレ!!
FLORALI trial
この論文では
- 急性呼吸不全患者310名
- 呼吸数>25
- P/F比300以下
を対象にしています。
HFNCと従来の酸素療法、NPPVを比較していますが
挿管率では有意差は認められないものの、予後はHFNCが良好
という結果が出ています。

じゃあ、NPPVはいらない?
とはなりません。
この論文におけるNPPVの装着時間は8時間程度であり、PS圧は8cmH2O(一回換気量:9mL)といった設定になっていました。また、対象疾患として
- PaCO2>45mmHg(Ⅱ型呼吸不全)
- COPD増悪
- 心原性肺水腫
などが除外されていました。つまり、NPPVの得意な疾患が除外されていた、ということになります。

次に、抜管後を対象としてHFNCとNPPVを比べた論文
この論文では抜管直後からHFNC(290症例)もしくはNPPV(314症例)を24時間装着しています。この論文によると、HFNCとNPPVでは死亡率に差が無かった、という結果が出ています。
↓SBTに関する記事

続いては術後呼吸管理を対象としてHFNCとNPPVを比べた論文
この論文では、心臓胸部手術を受けた合計830人を対象にしています。設定は
- HFNC:流量は50L/min、初期FIO2は0.50で開始し適宜調整
- NPPV:PS圧8cmH2O、PEEP4cmH2O、FIO2で0.50で開始し適宜調整(呼気一回換気量8mL/kgおよび呼吸数25 /min未満)
となっています。
結果は酸素化はNPPVが良好・再挿管率は差が無いというものに。

HFNC成功の予測因子は何かないの?
この論文では「呼吸数」を大事にしています。挿管になった群は「呼吸数」が多いという結果が出ています。
この論文では「呼吸数」と「SpO2」、「FIO2」に着目しています。この3つから「ROXindex」なるものを算出しています。
ROXindex=(SpO2/FIO2)/(RR)
ROXindexは上記の式で算出できます。HFNCはICUのみならず病棟でも使用することから「PaO2」ではなく「SpO2」を指標にしています。
このROXindexが4.88を下回る群だと挿管管理になる可能性が高い、という結果が出ています。

HFNCのガイドラインはないの?
日本のガイドラインはまだありませんが、各国でガイドラインができはじめました。

私が初めてみたガイドラインはコレ!!
2020年にだされたガイドラインになります。
AARC Clinical Practice Guideline: Management of Adult Patients With Oxygen in the Acute Care Setting
などなど、たくさんのガイドラインがでてきているため、一読する価値ありだと思います。
今後は日本のガイドラインが出ることを待たれます。
では、日本のHFNCの研究はどうでしょうか。

日本でも大規模トライアルは行われています!!
それが「JaNP-Hi Trial」です。
「本邦における急性Ⅰ型呼吸不全に対する非侵襲的人工呼吸器(NPPV)と高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の多施設ランダム化比較試験」です。
まだ論文になっていない(と思う)ため詳細は省きますが、日本でもHFNCの検討が行われています。はたしてどういう結果がでるか・・・。

ちなみに呼吸療法医学会などに参加すればシンポジウムやランチョンセミナーでJaNP-Hi Trialについての講演があります!!
先行で聞けるのが学会参加のいいところですね。

HFNCを使用する上では「騒音」も問題になる!!
高流量でガスを供給するため、HFNCを使用しているとどうしても「騒音」が発生してしまいます。この論文では「吸気フィルター」を装着することで騒音レベルが軽減できる、という結果が出ています。

HFNCを使用する場合、使用環境にも配慮した方が良い!!
↓HFNC中のネブライザーについての記事
さいごに
今回はHFNCの論文について紹介しました。近年HFNCの使用頻度は増加してきていると思います。

診療報酬も算定できるようになった!!
HFNCは登場してまだ10年程度、まだまだ新しい知見がたくさんでてくると思います。今後の動向も注目していきましょう!!
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人工呼吸器に関する電子書籍をkindle出版しています。興味のある方は是非!!
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