AIの参入で仕事がなくなる?
「AIに任せられる仕事はAIに任せて、人間はAIにできない仕事をすればよい」
↓AIについての記事
AIが本格的に導入された際、このように考える方は多いのではないでしょうか?
しかし、逆に言えばAIにできない仕事を我々人間が行っていく必要があります。
では、AIにできない仕事を人間が行うことはできるのでしょうか。
AIは物事の意味が分かりません。その点人間は考えることができ、意味を理解することができます。
ここで「仕事」という観点からAIについて考えてみましょう。
オックスフォード大学の研究チームの予測より、10~20年後にも残る仕事を見ていきます。
- レクリエーション療法士
- 機器の整備、設置、修理の第一線監督者
- 危機管理責任者
- メンタルヘルス、薬物関連ソーシャルワーカー
- 聴覚訓練士
- 作業療法士
- 歯科矯正士、義歯技工士
- 医療ソーシャルワーカー
- 口腔外科医
- 消防、防災の第一線監督者
AIに仕事を奪われてしまった人が
- リストにあるような仕事
- AIの登場によってつくられた仕事
に転職できるかどうかどうかが重要になります。
次に残る仕事の共通点を見ていきます。共通点は
- コミュニケーション能力
- 理解力
- 柔軟な判断力
- 肉体労働
などになります。
AIの弱点は、
- 意味が分からない
- 応用が利かないこと
- 柔軟性がないこと
- 決められたフレームに中でしか処理ができないこと
であり、AIが肩代わりできない分野と、AIが苦手としている分野は共通しています。
そのため、読解力を基盤としたコミュニケーション能力や理解力が重要です。
しかし、日本人の読解力が危機的状況にあると言われています。
日本人の学生は読解力、数学、化学で世界のトップ10入りしていますが、それは日本が移民が少なく、母国語として日本語を使っているためと考えられます。
基礎的読解力
基礎的読解力を超セするためのリーディングスキルテスト:RSTがあります。
このRSTはロボットは東大に入れるか「東ロボくん」に読解力をつけさせるため、エラーを分析した蓄積を用いて人間の基礎的読解力を判定するテストになります。AIに文章を論理的に読ませるために下記の6項目が重要になります。
- 係り受け解析:文がどこで区切られるかなどの文の理解
「私はパスタが好きです」という文の場合
「私」が「好き」にかかり、「好き」は「私」を受ける関係になります。
- 照応解決:文章中のこれ、それと言った指示代名詞が何をさすか
自然言語処理研究では「係り受け」や「照応」の研究が盛んにおこなわれており、係り受けでは80%の精度が得られています。
- 同義文判断:2つの違った文章を読み比べて、意味が同じであるか判断
AIで同義文判断が可能になれば、入試問題の記述でAIが自動採点が可能になります。が、まだまだ難しいのが現実。
- 推論:文の構造を理解したうえで、生活体験や常識、さまざまな知識を動員して意味を理解する
- イメージ同定:文章と図、グラフを比べて、内容が一致しているか確認
- 具体例同定:定義を読んでそれと合致する具体例を認識する力
「推論」、「イメージ同定」、「具体例同定」は意味を理解していないAIには難しいです。
上記のようにRSTはAIの正答率80%以上の「係り受け」、研究が進んでいる「照応」、AIにはまだ難しい「同義文判定」、「推論」、「イメージ同定」、「具体例同定」で構成されています。
問題文は教科書、新聞の文面を利用して作成されており、「教科書が読めない」、「新聞が読めない」状況は当事者に不利益を与えると考えたためです。
RSTの例題を見てみよう!!
実際にRSTの例題を見ていきます。
- 係り受け解析
天の川銀河の中心には太陽の400万倍程度の質量をもつブラックホールがあると推定される
この文脈において、以下の分注の空欄に当てはまる最も適当なものを選択しから1つ選びなさい
天の川銀河の中心にあると推定されているのは( )である
- 天の川
- 銀河
- ブラックホール
- 太陽
- 照応解決
次の文を読みなさい
火星には、生命が存在する可能性がある。かつて大量の水があった証拠が見つかっており、現在でも地下には水がある可能性がある。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる適当なものを1つ選びなさい。
かつて大量の水があった証拠が見つかっているには( )である。
- 火星
- 可能性
- 地下
- 生命
- 具体例同定
以下の文を読みなさい。
2で割り切れる数を偶数という。そうでない数を奇数という。
偶数を全て選びなさい
- 65
- 8
- 0
- 110
- 同義文判定
以下の文を読みなさい。
義経は平家を追い詰め、ついに壇ノ浦でほろぼした。
上記分が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」、「異なる」のうちどちらかで答えなさい。
- 同じである
- 異なる
- 推論
以下の文を読みなさい。
エベレストは世界で最も高い山である。
上記の文に書かれたことが正しい時、以下の文に書かれたことは正しいか。「正しい」、「間違っている」、これだけからは「判断できない」のうちから答えなさい。
- 正しい
- 間違っている
- 判断できない
- イメージ同定
下記の文の内容を表す図として適当なものを全て選びなさい。
四角形の中に黒で塗りつぶされた円がある。

以上が例題になります。
こうしてみると、簡単に分かりそうな問題が多いですね。
しかし、実際にやってみると意外と間違えてしまったり・・・・。

なかなか奥が深そうです。
テストの結果はどうだったの?
では、テストの結果はどうだったのでしょうか。以下の問題の正答率を見ていきます。
係り受け解析
以下の文を読みなさい。
仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアに広がっている。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択しのうちから1つ選びなさい。
オセアニアに広がっているには( )である。
- イスラム教
- ヒンドゥー教
- キリスト教
- 仏教
この問題に対して、
- 中学生の62%の正答率
- 高校生の72%の正答率
という結果でした。つまり、中学生の3人に1人以上、高校生の10人に3人近くが間違えたということになります。しかし、ここである疑問が浮かびます。それは「きちんとテストを受けたのか」という点です。きちんとテストを受けていなければ正答率が低いこともうなずけます。

テストに真面目に取り組まなかったのでは?

文中に出てこないヒンドゥー教を選んだ人が少ないため、ランダムに選んだわけではない。
適当に答えていれば文中にまったくい出てきていない「ヒンドゥー教」を選択している割合が高くなるはずです。しかし、「ヒンドゥー教」を選んだ割合は低かったため、結論としては「適当にテストを受けたわけではない」となります。
では、次の問題にいってみましょう。
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性名のAlexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
この文脈について以下の文中の空欄に当てはまるも最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
Alexandraの愛称は( )である。
- Alex
- Alexandra
- 男性
- 女性
なんとこの問題では
- 中学1年生の正答率23%
という結果がでました。23%というと、適当に回答を選んだランダム並みの正答率です。
この問題では
Alexandraの愛称は女性である。
と回答した中学1年生が多いという結果でした。
ここから「愛称」の意味がわからなかったのでは?
「愛称」の意味が分からず飛ばして読み、文としてなりたちそうな
Alexandraの愛称は女性である。
を選んでしまった可能性があります。事実この問題は年齢が上がるにつれて正答率も上がっていました。
同義文判定の問題
とある同義文判定の問題では
- 中学生の正答率57%
という結果でした。同義文判定の問題は「同じ」か「異なる」の2択であるため、この結果はランダムに選んだ場合と同じということになります。
イメージ同定の問題
イメージ同定の問題では
- 中学生の正答率12%
- 高校生の正答率28%
でした。4択問題だったため、中学生はランダム以下、高校生はランダム並みということになります。
つまり、中高生の多くが「イタリア料理以外のレストラン」を理解出来ないSiriと同じ分の読み方をしています。
分野別正答率
分野別正答率は「係り受け」、「照応」の正答率が高く、これはAIが得意としている分野です。
しかし、AI並みということはAIに代替えされる可能性があるということです。
そのため、AIにまだ難しいとされる
「同義文判定」、「推論」、「イメージ同定」、「具体例同定」がどのくらいできるかが大事です。
もしAIと差別化したいと考えるなら正答率70%以上は目指したいところ、ですが、実際は
「同義文判定」のみが正答率70%を達成しています。さらに「イメージ同定」、「具体例同定」は正答率が非常に低いのが現実です。
ランダム並み(つまりまったくできない)の被験者がどのくらいいるのでしょうか。
中学3年生で「係り受け」、「照応」は20%以下ですが、「同義文判定」では7割、「推論」では4割がランダム並みという結果がでました。
これは教室にいる半分がランダム並みであると言え、大量のドリル、丸暗記するしか勉強方法がない状態です。
- エベレストは世界で最も高い山である
- エルブレス山はエベレストより低い
- キリマンジャロはエベレストより低い
- 富士山はエベレストより低い
と、あらゆる例を覚えなければなりません。
また、具体例同定(数学)のランダム率は8割でした。これは「偶数とは何か」、「比例とは何か」という定義を読んで該当するものを選ぶ問題(つまり計算はいらない問題)において、8割の人がサイコロ並みという結果です。これは由々しき結果です。
さらに、これらのデータより
RSTの6つの能力全ての間に正の相関があり、密接に関係しているが異なる能力
という結果が出ています。
偏差値が高い高校とRSTは高い相関を示しています。そのことから、
- 偏差値の高い高校に入ると基礎読解力が上がる
- 基礎読解力が高いと偏差値の高い高校に入れる
の2つが考えられます。
学年別で分野別正答率をみると中学生は学年が上がるごとに正答率上がるが高校生は伸びていないという結果でした。そのため、高校1年生と2年生で差がないため「偏差値の高い高校に入ると基礎読解力が上がる」ではなく「基礎読解力が高いと偏差値の高い高校に入れる」が正しいと考えられます。
何が読解力を決めるのか
どうすれば「基礎的読解力」が身につくのか。
- 生活習慣
- 読書週間
- 学習習慣
- 得意科目
- スマートフォンを1日にどれくらい使うか
アンケートの結果、これらに差はないとのことです。
これは衝撃です、読書習慣などで差がつくと思っていました。
日頃の習慣で「基礎的読解力」にどのように影響を与えるかはわかりませんが、AIに負けないように「基礎的読解力」を身に着けることは非常に大切です。
さいごに
今回は基礎的読解力をテーマに今後AIに仕事を奪われるのかについて記載していきました。
正直、自分自身も基礎的読解力には全く自信がありません。
しかし、今後AIがますます身近になり、仕事に関わってくると本当にAIに仕事が奪われてしまうかもしれないと思いました。
そうならないように、「AIを使って仕事ができる」よう、少しずつ頑張っていこうと思いました。
とりあえず、まずは本をたくさん読んでいきたいと思います。
↓RSTを受けるにはこのサイトをチェック
参考図書・PR
- AI vs. 教科書が読めない子どもたち
コメント