日頃業務をしているとミーティングをする場面が多数あると思います。それは医療従事者に限らず、社会人なら誰しもが経験すると思います。
時にはミーティングの議長になり、ミーティングを進行する立場にもなると思います。
しかし、いざミーティングを始めるとなんだか覇気がない。
何か意見がある方はいますか?
自由に話し合いましょう。
シーン・・・・
もっと自分の意見を出してほしいんだけどな・・・・
こんな状況になるチームも多いと思います。チームの状況がこのような場合、良いパフォーマンスが発揮されるわけありません。そして一度このような状態になってしまったらなかなか脱却することが難しいです。さらに、こんなチームであればやる気がある人ほどチームを去って行ってしまします。
こんなはずでは・・・
本来ならば、自分一人が頑張るのではなくチーム全体で成果を出したいはずです。
そうするためには質問(問いかけ)の質を変えていく必要があります。
トップダウン方式からワークショップ型へ
チームの抑制はトップダウン方式の組織形態に仕事のスタイルを適応させた結果です。トップダウン方式の組織では経営層が定めた問題について、現場メンバーがひたすらに解決策を磨き続け、作業を分割し効率化することを意義にします。
一方ワークショップ型の経営層は現場と対話しながら理念を探求し、現場メンバーは自ら問題を発見し解決策を模索する必要があります。
つまりトップダウン方式におけるチームは分業の手段ですが、ワークショップ型の仕事中のコミュニケーションが重要になります。
トップダウン方式の問題点
- 判断の自動化による、認識の固定化
- 部分的な分業による、関係性の固定化
- 逸脱の抑止による、衝動の枯渇
- 手段への没頭による、目的の形骸化
認識の固定化
過去の経験を通して暗黙のうちに形成された固定観念にとらわれて新しい発想が生まれにくくなっている状態
- トップダウン方式→赤信号は止まれ→判断を自動化して効率化
- ワークショップ型→なぜ赤はとまれなのか?
関係性の固定化
過去の経験を通して暗黙の裡に形成された固定観念にとらわれ、新しい発想が生まれにくくなっている状態
うちの部下は頭がかたくて、アイデア発想力が低く困っている
うちの上司は最近の技術に疎いし頭もかたいからアイデアを提案しても聞いてくれない
お互いのことに頭がかたいと決めつけ、コミュニケーションをあきらめており、わかったつもりになっていただけで本質はわかりあえていない状態です。
衝動の枯渇
チームメンバーの内発的な動機に蓋がされ、主体的な行動やこだわりのある発送が陽圧されている状態
トップダウン方式では減点法による失敗に対するネガティブフィードバックを行ってきてた結果、個性的なパフォーマンスをするよりも、なるべくミスをしないようにすることに意識を向けるようになってしまいました。
さらに、集団の輪から外れないようにという同調圧力もはたらき、しまいには
お手洗いに行ってもいいですか?
と、生理現象にまで許可を取るようになってしまいます。これが逸脱の防止であり、逸脱の防止は内発的な動機を阻害する衝動の枯渇が発生してしまいます。
手段への没頭による、目的の形骸化
目的の形骸化
目的と手段がずれたまま、手段が自己目的化し、何のためにそれをやっているのか意義が感じられなくなっている状態
3人のレンガ職人の話
中世ヨーロッパに3人のレンガ職人がいました。旅人がレンガ職人ひとりひとりに「今何をしているのか」を聞いて回ります。すると以下のような回答が返ってきます。
一人目のレンガ職人
ひたすらレンガを積み上げています
二人目のレンガ職人
大きな壁を作って、家族の生計を立てています
三人目のレンガ職人
偉大な大聖堂を作っています
三人はそれぞれ「作業内容」、「業務の目的」、「仕事の理念」を答えています。
三人目は仕事を何故やるのか意識してモチベーションを高くしているのに対し、一人目は目的を感じられなくなっても、手段そのものを続けるっこと事体に没頭できてしまいます。これは人間の適応能力の高さからできることです。
質問(問いかけ)とはなにか?
質問(問いかけ)とは、
相手に質問を投げかけ、反応を促進すること
質問することによって相手は
- 記憶を思い出す
- 記録を調べる
- 知識を披露する
- 情報を検索する
などの行動を起こします。
さらに、投げかける質問の仕方によって相手の反応は全く別物になります。
たとえば、
昨日は何を食べましたか?
一年前は何を食べましたか?
この二つの質問では答えるために起こす行動は変わってくると思います。そのため、質問を工夫することによってチームのポテンシャルを引き出す望ましい反応を狙うことが可能になります。また、質問によって相手は反応を引き起こす過程で様々な感情を刺激することになります。質問次第で相手は前向きにも後ろ向きにもなります。そのことに注意しましょう。
意見を引き出す基本定石
- 相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する
- 適度に制約をかけ、考えるきっかけを作る
- 遊び心をくすぐり、答えたくなる仕掛けを施す
- 凝り固まった発想をほぐし、意外な発見を生み出す
相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する
- 悪い問いかけは相手の無能さを露呈させ謝罪を要求する
- 良い問いかけは相手の個性を引き出しこだわりを尊重する
- 悪い問いかけは相手の無関心から生まれる
- 良い問いかけは相手の好奇心から生まれる
相手の個性を引き出し、こだわりを尊重することが大切です。
適度に制約をかけ、考えるきっかけを作る
- 悪い問いかけはむやみに自由度が高く、とっかかりがない
- 良い問いかけは適度に制約をかけ考えるきっかけを作る
問いかけに適度な制約を設けて考えるきっかけを作ることが重要です。しかし、制約の弱い素朴な問いを投げかけことがダメなわけでありません。制約の弱い問いかけをして相手の様子を探ることにつかえます。
遊び心をくすぐり、答えたくなる仕掛けを施す
- 悪い問いかけは重いプレッシャーを与え、相手の口を閉ざす
- 良い問いかけは相手の思考を躍らせる
遊び心をくすぐり、答えたくなるような仕掛けを施すことが大切です。
たとえば、
良い没ネタはありますか?
みたいな質問です。
凝り固まった発想をほぐし、意外な発見を生み出す
無意識に繰り返している言葉に着目してゆさぶりをかける質問です。
- 悪い問いかけはいつも通りの言葉使いでいつも通りの発想を促す
- 良い問いかけはいつもと違う言葉使いで意外な発想を促す
たとえば利便性という単語を使わずに
- 不便だけど使いたくなるようなモノ
- 今は不便と感じていないけれど、あるとユーザーの手間を省けるモノ
みたいな感じです。
- 悪い問いかけは事前に用意された結論に向けて予定調和に進行する
- 良い問いかけはチームにとって思いもよらない結果を生み出す
凝り固まった発想をほぐし、意外な発見を生み出すことが可能になります。
場の目的
ミーティングを行う際は目的をはっきりとしましょう。
場の目的のパターン
- 情報共有
情報をインプットするための場
- すり合わせ
全逓や認識をすり合わせるための場
- アイデア出し
ブレインストーミングなどの手法を使って、メンバー同士でアイデアを出し合うための場
- 意思決定
具体的なアクションに向けて、物事を決めるための場
- フィードバック
パフォーマンスの改善を促すための場
質問の組み立て方
意見を出す基本定石は
- 相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する
- 適度に制約をかけ、考えるきっかけを作る
- 遊び心をくすぐり、答えたくなる仕掛けを施す
- 凝り固まった発想をほぐし、意外な発見を生み出す
でした。また以下の点にも注意が必要です。
- チームにおける自分の立場や役職を考慮する
- 元々の自分のキャラクターに合わせる
立場が上であればあるほどミーティングの目的や時間配分などはコントロールできますが、トップダウン型になりやすいデメリットには注意が必要です。逆に立場が下であればあるほど、ミーティングの目的や時間配分などをコントロールできませんが、経験不足を逆手にとって素朴な疑問をぶつけやすいメリットがあります。
質問を組み立てる手順
- 未知数を定める
何をあきらかにしたいのか、相手に何を尋ねたいのか
- なぜWHY型:意義を尋ねる
- なにWHAT型:定義を尋ねる
- 方向性を調整する
質問のレベル、示す時間軸を調整
質問の主語レベルは相手に与える印象や視点に影響を与える
- 主語の抽象度を上げて視点を引き上げる
あなた→チーム→組織など
- 主語を個人にして自分事にする
組織→あなた、チーム→あなた、など
- 制約をかける
相手に意見を引き出すためには適度な制約が必要
制約をかけるテクニック
- トピックを限定する
トピックを絞ることで考えるポイントを1点に集中させることができるがトピックが狭すぎるとかえって話しにくくなる
- 形容詞を加える
質問に形容詞を加える簡単に質問の効果を高めることができる
- 範囲を指定する
時間指定など、質問の探索の範囲を指定する
- 答え方を指定する
回答の個数、所要時間などを指定して相手の反応を変える
思考は「 発散」と「収束」に分類できます。
- 発散: 質問に関連する手がかりを幅広く検討していく思考
気軽に意見を交わせるような制約
- 収束: 質問に対する答えを絞り込み、結論に迫っていく思考
吟味された答えを期待するような制約
質問の精度を上げる
フカボリ
チームの根底にあるこだわりがはっきりせずぼやけているとき、解像度を高める
- 素人質問:みんなの当たり前を確認する
「勉強不足で申し訳ありませんが、」など枕詞におわびをつけたり「私は○○と考えたのですが、」と自分なりの意見を添えることが大事
- ルーツ発掘:相手のこだわりの源泉を聞きこむ
お互いのこだわりのルーツを深く理解すると、チームは求心力が生まれ、ポテンシャルを発揮しやすくなる
- 親善美:根底にある哲学的な価値観を探る
メンバーやチームの根底にある哲学的な価値を探る
また、学会発表などで
素人質問で申し訳ありませんが、
などは、相手の初歩的なミスを指摘する際に使ったりします。
ゆさぶり
固定観念の価値のずれなどのとらわれがみえてきたとき、ゆさぶりをかけて、新しい可能性を探る
- パラフレイズ:別の言葉や表現に言い換えを促す
別の言葉や表現に言い換え、補足や定義の言語化を促す
パラフレイズのバリエーション
- たとえる
何かに例えてもらう
- 数値化
点数やグラフなどで定量的に表現してもらう
- 動詞化
染みついた名詞方の言葉を動詞型に言い換えてもらう
- 禁止
根本的に特定のキーワードを封印
- 定義
言葉に定義を未知数にした質問
- 仮定法:仮想的な設定によって視点を変える
もし~だったら?、仮に~だとすると?
仮定法のバリエーション
- 立場の転換:別の立場で考えてもらう
- 制約の撤廃:目の前の制約を取り払って考えてもらう
- 架空の物語:別の世界を想像してもらう
架空の設定によって相手がとらわれている制約を外したり見方を変えたりする
- バイアス破壊:特定の固定観念に疑いをかける
本当に○○は必要?、○○を除外してみるとどうなる?
注意をひくためのアプローチ
ヒトは長時間集中することができないため、質問をする際は相手の注意をひくことから始めます。相手の準備ができていない状態で質問しても回答はかえってきません。
注意をひくためのアプローチ
- 予告:事前に伝えておく
- 共感:相手の心境を代弁する
- 煽動:前提を大げさに強調する
「全米が泣いた」など、使い過ぎは禁物
- 余白:あえて間を演出する
質問を引き立てる
問いかけのレトリックの3タイプ
- 光の量を足すタイプ:質問の前提や特定箇所の印象を強める技法
質問の前提や特定箇所の印象を高める
- 倒置法:語順を逆にすることで前提を印象付ける
- 誇張法:大げさな表現でフォーカスポイントを作る
- 列挙法:具体的な単語を並べて、質問の抽出度をカバーする
- 対照法:対をなすメッセージを添えて質問を際立たせる
- 光の色を変えるタイプ:質問の意味を拡げ、イメージをふくらませる技法
質問の意味を拡げ、イメージを膨らませる
- 比喩法:別のものに喩えることでイメージを豊かにする
- 擬人法:人間に見立てることで、質問に感情を込める
- 共感覚法:五感に関する表現で、感覚を刺激する
- 声喩法:オノマトペを足して、質問を情緒的にする
- 光を和らげるタイプ:質問のニュアンスをぼやかす技法
質問のニュアンスをぼやかす
- 緩叙法:二重否定を使って、直接表現の印象を操作する
- 婉曲法:露骨にネガティブな表現はオブラートに包む
さいごに
今回は質問のテクニックについてでした。質問一つ取っても様々なテクニックがありますね。これらをうまく活用してミーティングなどを活性化していきたいものです。
しかし、これらテクニックを使う際は組織の「心理的安全性」が高くないとできません。
↓心理的安全性について
また、質問のテクニックはコーチングにつながるところも多数あると思います。
↓コーチングについての記事
いろいろと応用範囲が広そうです。
参考図書・PR
- 問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術
非常に分かりやすい書籍でした。一押しです。
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